「わからなーい。それは弁護士に聞いたほうがいいと思います」

――いや、上田さんの言葉として。

「弁護士に全て任せているので、私は。弁護団が引き続きやってくださります」

ADVERTISEMENT

――弁護団を信じてついていく。というか、一緒にやっていく。

「そうですね。今後も私の考えを伝えていきたい。とにかく、本当の私を知ってもらいたいのです」

記者に残した「奇妙なメッセージ」

 手記でも面会でも、上田美由紀は事件について一切語らなかった。「本当の私を知ってもらいたい」と言いながら、本当に語るべきことには口を閉ざしたまま、上田美由紀は判決訂正の申し立てをした結論を待つ――。

 面会終了を知らせるタイマーが鳴った。静かに立ち上がった上田美由紀は、コクリと会釈をして背を向け一歩、二歩と面会室の扉に向かって歩き出した。

 そのとき、不意にこちら側をもう一度振り返り発した言葉が、「西の毒婦」と呼ばれた上田美由紀の、最後の肉声だった。

「夜遅いからってラーメンばっかり食べちゃいけんよ」

 いつも帰宅が遅いため、家の近くのラーメン屋で食事を済ませることが多いと零していた友人記者に対しての気遣いだったことに驚いた。どんな思いで言葉にしたのだろう。

 2人を殺めた罪に問われた被告としての顔と、赤の他人の食生活を息子のようにして気遣う顔。なんど反芻してもこんがらがった。

 そして――。その数時間後、件の判決訂正の申し立てが棄却され、上田美由紀は確定死刑囚となった。