「それはお答えできません」
――やはり、いまの状況に、納得はいっていない。
「それはちょっと弁護人に……。弁護団と一緒に戦っていく、考えていきます」
おきまりのフレーズ
これまで何度も同じ質問を繰り返してきたとはいえ、事件の話になると毎度のごとくピシャリと遮断するのは、なぜだろう。それはお答えできません。それはちょっと弁護人に……。これらのフレーズが毎回出てくる。
思えば、いつも彼女は冷ややかに笑いながら言うのだった。「やっていない」とも言わないのは、事件についての発言を避けるよう弁護士に言われていることも大きな要因かもしれないが、その表情は、このときばかりは毒婦のオーラを纏っているように思えた。
どうすれば事件について語るのだろう。そこで直接的な質問ではなく、内容を迂回させて聞いた。
――最高裁の判決を初めてきいたときはどんなことを思ったか覚えていますか?
「覚えてますよ。びっくりしました。わからなかった、なにがなんだかわからなかった」
――びっくりしたこと以外に覚えていることはありますか? その日のこととか。
「びっくりしたというより、何て言ったらいいんだろう? うーん、どうしたらいいんだろうとか、どうしたらいいんだろうと。わからない。わからなかったです。パニックになっていたというか」
――その日から、以前と後では、何か変わりましたか?
「だから、そこがわからないんです」
――わからないからいまも以前と変わらず、ということですか?
「変わらずに、という言葉がわからず……。私は変化する人じゃないんで。ギャアギャア喚く人ではないんで」
――では、これまでの8年間で得たものや成長した部分は?