事件については一切語られていない手記はいわば、来る結審が思い通りにならないかもしれないという心像のようなものなのだろうか。そうした覚悟を感じさせる上田美由紀に、「これからどう過ごすのか」を聞くと、「いろいろやりたいことがありますけど……、いまは言えません」
上田美由紀は強張った面持ちでそう答えた。夜は眠れていますか、こう聞くと、「あまり……。でも、拘置所の規則があるので布団には入っています」
夜、上田美由紀はどんな夢を見て結審までの日々を過ごしていたのだろうか。
主文、被告を死刑に処す――。上田美由紀にとっては最後の望みであったはずの最高裁の審理は、1カ月に満たない間に結審した。
西の毒婦、最後の肉声
松江拘置所。判決後、再び、上田美由紀に面会した。彼女はペパーミントグリーンのTシャツに茶色の短パン姿で現れた。切羽詰まった感じはなく、以前と様子は変わらない。ときおり笑顔をすら覗かせる。
上田美由紀は最高裁に対し判決訂正の申し立てを行なっており、このときその審議が行われていた。あと数日もすれば、結論が出る――。
判決訂正の申し立ては、判決文の誤字や脱字を訂正してもらうために行う手続きで、死刑判決が覆ることはほとんどない。そのため、最高裁の判決をもって“事実上〞の死刑確定となるのだが、身分は未決のままだ。
ひいてはこの申し立てが棄却されると未決から確定死刑囚となる。そして、こうした面会は、その時点で原則として親族や弁護士以外には許されず、再審でも認められない限り生の声を聞く機会は失われてしまう。もう時間はない。上田美由紀との面会はこれが最後になるかもしれないのだ。
そこで友人記者と手分けして面会を重ねた。現状が、もうどうすることもできない寄るべなさのなか、上田美由紀は何を語るのか。以下は、それを一つにまとめたものである。
