依頼に不審な点はなく、撮影日や宣伝写真を示す「本番日」「コンポジ」などの専門用語も違和感なく使い、担当者は普段からモデルを扱う仕事に慣れた客だと思い、西森の企みに気付かなかった。

「少しでも声を出せば、首を切ります」

 A子さんは事務所からその連絡を受け、メイクを済ませた上で時間通りに出張した。

「クライアントの西森社長ですね。今日はよろしくお願いします」

ADVERTISEMENT

 事件当日、西森とA子さんは駅で落ち合った。西森の企みも知らず、A子さんは疑うことなく、車に乗った。西森は車の中で「自宅でできる背骨矯正の方法がある」などと話して興味を引きつけ、A子さんに「サービスで教えますから」と言って喜ばせた。

 自宅に着くと、「体を固定するから」と言って、A子さんを寝かせて後ろ手に縛った。「ちょっときついんですけど……」と戸惑うA子さんに対し、いきなりこんな紙片を見せたのだ。

〈今日のたった2時間、私の指示に従うだけで家に帰れますし、命の保証もします。少しでも声を出せば、首を切ります。2分で死にます〉