企画から2年半も試行錯誤、最も苦労したのは……
まず、バスの1階にある厨房の面積が限られ、ガスなどを使用できず揚げ物・炒め物・煮物などの提供が難しかった。寿司であれば、基本的に火は使わずに済む。SUSHI BUSでは事前にカットされたネタやシャリを仕入れて、握りなどの最終工程を車内で行うだけで済ませている。
もう1点は、前代未聞ゆえに先行者が誰もいなかったこと。
「面白いビジネスでも、簡単なら明日から他社が参入してくる。2階建てバスを借り上げてお寿司を提供することは、コモディティ化されにくいユニークなビジネスだなと」(矢野社長)
そもそも、同社によるとレストランバス自体が国内でWILLERグループしか手がけていないもので、台数も5台のみ。SUSHI BUSが大成功を収めて他社が興味を持っても、ノウハウがない状態でバス車内の飲食店として認可を得ることは非常に難しい。かつ、そこをクリアできてもすでに「SUSHI BUS」「寿司バス」など非常にシンプルな登録商標を同社で先行して取得している。
先行者がいないというのは、裏を返すと非常に難しいビジネスと見ることもできる。事業計画でも、当面は同業態の参入がないことを見越しつつ、1台目の車両開発にかなりの投資を行っているという。
構想から実現までには2年半を要した。ほとんどの期間を、協力してくれる企業探しに費やしたという。
なかでも説得が難航したのは、「寿司レーンの業者探し」だった。業界で7割のシェアを誇る北日本カコーに協力を依頼したものの、動く車内でのレーン稼働は前例がなく、長らく協力を渋っていたそうだ。北日本カコー社内では当初、「業態への許認可や運行までのハードルが⾮常に⾼いだろう」とSUSHI BUSの実現を疑問視する声も上がっていたという。
そんな北日本カコーの不安を解消すべく、矢野社長を中心に何度も試行錯誤を重ね、寿司が前に飛んでいくのを防ぐ「皿のホルダ-」を開発した。急ブレーキをかけても寿司や皿が飛ばないようにする実験を車内で重ね、動画やデータを北日本カコーに提供。ようやく協業でのレーン開発が始まったという。

