明治時代は千日手そのものが反則だった
「連続王手の千日手」も、なぜ禁止とされたのか明らかになっていない規則である。そもそも「千日手」とは同じ局面が延々と続いて勝負がつかないことをいう。一局において同一局面が4回登場すれば、千日手が成立したとされ、プロ将棋では1手目から指し直しとなる。
連続王手の千日手は、千日手が成立する過程の手順で、片方の側が常に王手をかけ続けていることをいう。通常の千日手では、途中で王手にならない順が入っているのだが、すべて王手だと反則とされるのだ。
これがなぜ禁止とされたのか。そもそも、明治時代は千日手そのものが反則だった。どのような規則かというと「攻めているほうが手を変えなければいけない」。
同じ局面が4回出現するまでに、攻めているほうが手を変えなければならないのだが「攻めているほう」の定義が曖昧極まりないのだ。そもそもどちらも攻めているようには見えない局面で千日手が生じる可能性もある。むしろ現在のプロ将棋における千日手は後者のほうが多数派と言えるかもしれない。
「攻めているほうが手を変えなければいけない」の名残が、連続王手の千日手は禁止となったのではないだろうか。王手ならば明らかに攻めていると判断しやすいからだ。
二歩は打てれば好手になることが多い
プロの公式戦では「打ち歩詰め」と「行き所のない所に駒を打つ」を除くすべての反則が出現している。その中で最も多いのが二歩だ。
なぜ二歩が多いのかというと、二歩は打てれば好手になることが多いからである。「ああ、ここに歩を打ちたいな」という局面が生じることはままあるが、ついうっかり自らの歩を見落としてしまうということだろう。
続いて多いのが二手指し。持ち時間が少なくなった終盤で一手指してトイレに行き、慌てて戻って次の手を指すと、相手が「まだ指していませんが」などというのが想像しやすい光景だ。
意外に思われるかもしれないが、初手での二手指しもある。後手番の棋士が先に指すと二手指しの反則負けとなる。対局直前に行われる振り駒で先手後手が決まる対局ならまだしも、事前に先手後手が決まっているリーグ戦などの対局では、自身の手番を勘違いしたまま対局に臨んで、悲劇の主役を演じる棋士もいる。
どこまで本当だかわからないが、先手番なのに後手番の振りをして待っていたら、相手が指してしまって反則勝ちを得た棋士がいたという話もある。