将棋棋士はプロといえども、人間だからミスを犯すことはある。飛車や角をタダで取られることなど日常茶飯事……とまでは言わないが、そういうミスを犯しても、さほど騒動になることはない。あの羽生善治竜王ですら、自玉の一手詰めをうっかりしたことがあるのだ(こちらは業界内では一時期、かなり話題となったが)。

羽生竜王にも「反則負け」の対局があった? ©文藝春秋

 しかし、同じミスでも、「反則」となると急に耳目が集まる。10月の中旬に立て続けで3回もプロ将棋で反則が生じ、こちらは大きく報道された。

 そもそも、年に数千局ある対局の中で、平均すると毎年3~4局ほどは反則が起こっている。10月の事例はそれがたまたま連続しただけとみることもできる。

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日本将棋連盟が定めている7種類の反則

 では、将棋の反則とは何だろう。

 江戸時代の初期には反則ルールがほぼ定まったとされているが、現在、日本将棋連盟のHPに反則と定められているものは以下の通り。

1、二歩

2、打ち歩詰め

3、王手放置

4、動けないところに駒を進める

5、二手指し

6、行き所のない所に駒を打つ

7、連続王手の千日手

 このうち、3~6についてはわかりやすい。まず王手放置については、「かかった王手を解除しなかった」と「自ら王手がかかる順に進めてしまう」の2種類があるが、いずれにしても将棋は自らの玉を取られたら負けなのだから、自玉に王手がかかった状態で相手の手番にするのがダメというのは理解できる。

「動けないところに駒を進める」とは、ルールに定められた駒の動かし方から逸脱することをさしている。プロの対局では角の道筋を間違ってしまったり、成れない駒を成ったりしてしまったという例がある。最近では、盤上の駒を飛び越えて自らの角を動かしてしまったことが話題となった。

2018年10月18日に行われたB級1組順位戦の橋本崇載八段と菅井竜也七段の対局。
図から菅井は▲4六角と指してしまう。7九の角が6八の歩を飛び越えてしまった。飛・角・香はいずれも駒を飛び越えて動くことはできないので、菅井の反則負けとなった。

 続いて二手指しだが、将棋は一手ごとに自らと相手が交互に指すのがルールなのだから、それを破ってはいけないというものだ。

「行き所のない所に駒を打つ」は、将棋の駒のうち「歩兵」「香車」「桂馬」の3枚は後戻りできない。よって盤上の上から一段目(桂馬の場合は二段目も)に、この3種類の駒を打ってはいけないというものだ。打っても次に動ける場所がないからである。