この頃になると睡眠をとる時間以外はずっと、5分おきくらいに携帯が震えてメッセージが届くようになっていた。これはまずい。方針を変えた。正確にはストーカー呼ばわりをしていないけれど、ストーカーという言葉を使ったのは悪かったと謝り、友人の病気のことは他言しないでほしいと頼んだ。けれどもどうにも言うことをきかない。必死になって宥(なだ)め、説得をするのだが、ゆるさないの一点張り。
冷静に、怒らせないように、しかし私が怖がっていることを伝えないように考えながら返信を重ねる。しかし一旦は納得したように見えても、すぐにまた「島に行ってめちゃくちゃにしてやる」と言い始める。「週刊文春」にも本当に電話したと言う。
だんだんと気味が悪くなってきた。正常な思考状態にないように思える。文脈もおかしいし、理屈もなにもすっ飛んでいることすらも自覚していない。それなのに、嫌がらせに関してはやけに頭が回る。こちらが嫌だと思うことを、的確に突いてくる。私が無視をすれば、「シカトするのか」と憤り、酷く不安定になって、過激な罵倒を連ねていく。
会ってもらえるまで家の前で待ち続けるのが男の道
島に来るなら来るで、いきなり押し掛けるのではなく、ちゃんとメールで連絡をして約束を取り付けてから来てほしい。あなたが会いに行くと言っている人、みんなあなたと話をしていいと言っているからと返すと、そんなのは男のやり方ではない、田舎の人間をなめるな、会ってもらえるまで家の前で待ち続けるのが男の道だ、などと言い、俺の悪口を言いふらしたなと激怒し始めた。そして浮気をしていると妄信している人物の家を突き止めたと、グーグルマップを貼り付けて送ってきた。うわあああ。
その人の家がどこにあるのか知らなかったので、あわてて連絡をとり、実は恥ずかしながら……と事情を説明すると、それはおそらく同姓同名の人の住所だと思われますというメッセージ。私の家、××なんですよ。え、集落からして全然違うじゃないですか。同名の方とは親戚筋ですらなくて、話したこともないという。あああ、たしかに小豆島内、同じ苗字の人が多い。いや、島にかぎらず、地方とはそんなもの。田舎あるあるだ。にしても、どなたか存じ上げませんが、自営業だからってフルネームと住所をネットにあげちゃうの、危ないからやめてください……。
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銃のことで警察に変なことを言われるのは、あまりいいことではないし、私の友人どころか知り合いの知り合いですらない人の家に、突然押しかけて暴れられても困るし、と心の中で言い訳を沢山並べながら、私はとうとう生活安全課に連絡を入れた。一番若い、先日転属してきたばかりのOさんが話を聞きますということになった。銃の所持許可の最後の書類手続きをしてくださった方だ。