「微動だにせず立っている先輩の姿に憧れて……」
――皇宮警察は消防の仕事もしているんですね。おそらくほとんどの人が知らないんじゃないかと……。続いて儀仗について教えてください。
青木さん わかりやすいのが、皇居正門前でちょっと普通とは違う制服を着て、警備しているのが儀仗です。それは正門儀仗と言いまして、他にも国賓がいらしたときのお出迎えだったり、一般参賀の際のお立ち台儀仗だったりといろいろあるのですが、私のような若手護衛官が必ず通る道のひとつです。私自身も、儀仗の制服で微動だにせずに立っている先輩の姿に憧れて皇宮護衛官を志した部分もあったので……。
――実際に儀仗を拝見してみると、単に警備をしているというよりは、儀式的な意味合いが強そうな印象です。特に交代のときのピタリと揃ったキビキビした動きや、ピクリとも動かずにまっすぐ立ったままの姿勢は誰にでもできることではなさそうですね。
青木さん この動かないということがなかなか大変なんです。指先まで意識を巡らせていないと、姿勢は確実にズレてくる。自分では動いているつもりはなくても、徐々に指先が動いてしまったりするんです。見ているだけのときにも大変そうだなあとは思っていたんですけど、実際にやってみると想像以上で(笑)。自分の中で完全に身に付けた体に染み込ませ、頭で考えないでもできるようにしないと。だから最初は休日もみっちり儀仗の訓練をしました。
――皇居はたくさんの観光客も見ていますし、そのへんも意識されますか?
青木さん いやあ……たくさんの人に見られているのは緊張しますけど、やっぱり動かないようにしないといけないという意識のほうが強いですかね。自分たちの動きひとつが特別感につながって、皇室のイメージにもつながっていくわけですから。だから身だしなみも大事ですよね。儀仗の際の制服の着こなしはもちろんですし、普段門に立っているときも制服が曲がったりしていないかとか、そのへんは同僚とお互いにチェックをし合っていますね。
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“皇室守護”と言っても、単に警備をするというだけにとどまらず、皇室のイメージにも直結する“見られる”仕事。そうした点は確かに他の都道府県警察とは一線を画する部分だろう。実際に儀仗や警防といった特別な業務があるのは皇宮警察だけである。青木さんら若手皇宮護衛官たちが活躍する「正門儀仗」は皇居前広場で毎日見ることができる。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
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写真=佐貫直哉/文藝春秋
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