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「そんなの親に言って、理解してもらおうなんて、甘い考えだ。親も所詮は他人、自分は自分でいいだろう。だからそもそも、言う必要がないじゃないか」

「僕は、親には一生黙っていようと誓った。だけど親は、最期まで僕が独りでいる事を心配しながら死んでいきました。本当はパートナーがいるのに。若いうちに言えば良かったと後悔しています」

こんな人もいた。

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「私こんなんだしさ! 親も気づいているだろうと思って、ペロペロ~ってカミングアウトしちゃったわけ! そしたら全く気づいてなかったみたいで、縁、切られたわよ~」

 

 世の中には、親にカミングアウトをして後悔をしている人もいれば、カミングアウトをせずに後悔をしている人もいるのだ。ますますどうしたら良いのかわからなくなってしまったまま、北海道に帰省する日が訪れた。僕の心は迷ったままだった。

友人宅で松茸をご馳走になっていたら……

 帰省1日目、僕は高校時代の友達の家に招待されていた。恋のライバルだった愛の家だ。高校時代の友達も、愛の家族も「ななぴぃお帰り!」と言って出迎えてくれた。この日は串カツパーティだ。

 愛の家族が、好きな具の串をその場で揚げて食べられるように準備をしてくれていて、それぞれの具には丁寧にプレートが置いてある。

「おくら」「うずらの卵」「豚串」……。具が書かれているプレートの一枚に僕の目は奪われた。「松茸」と書かれたプレートだった。

 由貴や翔らも、それに気づいているようだが、串揚げにするにはあまりにも高価な食材すぎて手を出せずにいたのだ。それに気付いた愛のお父さんが言った。

「みんな、松茸食べないの? 美味しいから食べてごらん」

「良いんですか!」とみんな大喜びで松茸串に手を伸ばす。僕も一つ揚げて食べてみた。外はカリカリの衣で、中からジューシーなキノコ汁が口の中に広がった。

「どうだ、松茸、うまいだろ?」

「美味しいです!」とみんながありがたそうに食べているのを、愛のお父さんは嬉しそうに見ながら、こう言った。

「でもな、それは『エリンギ』だぞ! はっはっはー! みんな騙されたな!」

 松茸なんて普段口にできない僕らは、お茶目な愛のお父さんにすっかり騙されてしまったのだった。

「人生そんなもんだぞ! あるもので、いかに幸せに生きるかだ! はっはっはー」