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 渓谷を遮るような構造物が見えた。ここは白丸ダム。東京都交通局の発電用ダムだ。発生した電力は都営交通で使う……ではなく、いったん小売電気事業者に売却する。都営地下鉄や都電の電力は、あらためて電力会社から買うという仕組み。

 そして、ここには名物「白丸魚道」がある。ダムによって川魚たちの遡上が遮られるため、代わりの遡上ルートを人工的に作った。見学は無料。らせん階段を降りていくと、段差のある水路と、細長い水槽がある。ここをイワナなどが上っていく……。魚もアドベンチャーだな。

 
 

鉄道好きに嬉しいカフェがある

 終点の奥多摩駅も4月にリニューアルされた。外観の変化は少ないけれど、内部は変わった。駅事務室を縮小して待合室を整備、更衣室と靴を洗う設備ができた。登山やハイキングの基地がコンセプトだ。通路は多摩産木材を紹介するギャラリーになっている。

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 駅舎2階はポートおくたまという店舗がリニューアル。店舗スペースが広がり、カウンターキッチンにコーヒーの自家焙煎装置を据え付けた。手打ちそばや本格派のカレーも食べられる。喫茶店からカフェへの大変身だ。登山グッズやお土産の販売、ライブスペースもあって、音楽イベントもできる。プラットホーム側の壁に大きな窓がある。これは鉄道好きに嬉しい。電車を眺めながらコーヒーで休憩、食事もできる。もうここに住みたい。

JR東日本さん、疑ってごめんなさい

 奥多摩駅の駅前にはバスターミナルがあって、奥多摩湖などへバスで行ける。奥多摩湖に行ってみた。ドラム缶橋と呼ばれる浮橋があって、まるで小舟に乗ったような視点で歩ける。この感覚は珍しく、楽しい。

 

 いやぁ、JR東日本さん、疑ってごめんなさい。確かにアドベンチャーがたくさんありました。青梅線の青梅~奥多摩間は東京アドベンチャーラインです。命名からまだ9カ月だけど、不自然な名前ならすぐに廃れているはず。でも、多摩川沿いの人々、アクティビティ関連のお店や飲食店に入ってみたら、東京アドベンチャーラインは歓迎されていた。

 

 奥多摩が関東大手私鉄の観光地なみに流行ったら、将来、ロマンスカーやLaviewのような特急列車が走るかもしれない。東京アドベンチャーラインとは、すごいことを考えたな。

写真=杉山秀樹/文藝春秋

※「東京アドベンチャーライン」の旅の模様は、現在発売中の『文藝春秋』7月号のカラー連載「乗り鉄うまい旅」にて、計5ページにわたって掲載しています。

文藝春秋2019年7月号

 

文藝春秋

2019年6月10日 発売