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参院選でゲイ当事者が当選

 それから、もう一つ、これも下半期に入ってからの出来事ではあるが、今回の参議院選挙で、ゲイであることをオープンにし、活動を続け、豊島区議を2期約8年務めた石川大我さんが当選を果たした。「日本にも同性婚を」と堂々と公約に掲げた候補が当選を果たしたことも、一部からは想定されていなかったことかもしれない。

 僕も彼の選挙ボランティアとして、駅でのチラシ配りやゲイ当事者として街頭スピーチなどをさせてもらった。

 この選挙活動のお手伝いをする中で、世間のさまざまな感情に触れることができた。

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 外国人旅行者がレインボーののぼりを見て「応援してますよ」と握手を求めてくださったりする一方で、「同性婚」の文字をみて、「キモい」「死ね」などと暴言をぶつけてくる人も数多くいた。そういった心無い言葉を投げかけられたボランティアの子は決まって、見た目もおとなしそうな、人の良い子ばかり。なぜか、たまたま僕は何も言われなかったが、傷つけられた子を守ってあげることができず、悔しい思いをした。

©iStock.com

僕たちは、平等であることを求めているだけなのだ

 こういうことを書くと、「LGBTは自分たちの権利ばかり主張して」とか「ゲイをキモいと言う権利もあるはずだ」などと言われることもある。

 そういう言葉は、これまで生きていく中で、たくさん浴びてきた。

 そして、耐えてきた。

 ずっと耐え続けている人がいる。それを知っているのに、国は平然と「想定されていない」の一点張り。

 強調しておく。

 僕たちは権利ばかり主張しているわけではない。

 僕たちは、平等であることを求めているだけなのだ。

 いつか、当たり前のように同性同士が結婚できるようになったとき「昔は同性婚は想定されていなくて、結婚することすら許されていなかったんだよ」と若い子たちに言いたい。そんな世の中になっていたらいいな、と思う。

 そして、2015年に僕らが提出した婚姻届、「男性同士を当事者とする本婚姻届けは不適法」と書かれた紙が貼られて返ってきた婚姻届を見せてあげたい。

 当たり前の様に人権が侵害されていた証拠として、そして、それを人の力で歴史を変えていったという多くの教訓として。

 きっとそう遠くない未来だと思う。

 そう信じて、僕は今日も、前を向いて生きている。

僕が夫に出会うまで

七崎 良輔

文藝春秋

2019年5月28日 発売