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『本屋さんのダイアナ』ティアラのモデルは母

――読者からの質問に、「柚木さんの女友達はどんな人ですか」というのがあったんですが、その瑛子さんとは長いつきあいなんですね。

柚木 でも大ゲンカして抱き合って泣いて仲直り、なんてことは一回もないです。一回、瑛子ちゃんがすごく遅刻した時に怒ったくらい。いつも私がうるさいので瑛子ちゃんも疲れたことがたくさんあると思います。でもずっと仲良しです。

 もちろん瑛子ちゃんだけを贔屓して、ほかの人が取るに足らない存在だというわけではないです。ただ、瑛子ちゃんは一緒にいた時間がすごく長いし、彼女がいつも読んでくれて、支えてくれて、傷つけたくないのか厳しいことをあまり言わなくて(笑)。瑛子ちゃんに甘やかされた結果、私がこんな風に変になったという説もあります。

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 やっぱり親友が読者ということは私の中ですごく大きいですね。瑛子ちゃんが読んで嫌な気分になるものは書きなくないという気持ちがあるので、『ナイルパーチの女子会』を書く時は緊張しました。実際に読んですごくショックを受けていて、でも「すごく好き」と言ってくれました。

――瑛子さんってどんな方なんでしょう。なんか、おっとりしていそうなイメージが……。

柚木 すごく美人でおっとりしていて優しくて、なんでもできちゃうし、みんなに好かれていて、でもすっごく頑固で偏屈なところがあるんですよね。私はその一本気で律儀で嘘がつけないところに憧れていて。瑛子ちゃんはすごくお洒落で上質なものを手入れして長く使うんですよ。私は革ものでもすぐ傷をつけてしまう。それで「あなたにはエルベ・シャプリエのバッグがベストだ」って言われました。丈夫なナイロンで、傷がつかないから。

――まさに本日お持ちのバッグはエルベですね(笑)。

柚木 『テッド』っていう映画がありますよね。ぬいぐるみのテッドが何をしても、マーク・ウォルバーグが「テッド最高だよ」「テッド超面白い」って言うから、テッドもパーティするわ女の子を口説くわ、やりたい放題で。マークがぬいぐるみに命を吹き込んだわけですよね。私は瑛子ちゃんが命を吹き込んだヤバいテッドのようなものです。瑛子ちゃんが面白いと言ってくれたから、小説もやってみる気になりました。

 母との関係も近いものがあるかもしれません。私の母は『本屋さんのダイアナ』のダイアナの母親、ティアラのモデルでもあるんです。母は瑛子ちゃんよりももう少し冷淡なところがあるんですが、基本的にいつも「大丈夫だ」と言ってくれて、そこに救われることが多いです。夫もそうです。

――ティアラさんは完全に元ヤンキーですが、お母さんは……。

柚木 あ、もっとシックです。アパレルのお洒落な人です。ぶっ飛んでいるように見えて基本的に生真面目で、娘に対して愛情を惜しまない人。離婚を経験して、金銭的にも精神的にもきつい思いをしているのを見てきたので、母にはすごく感謝していますし、女の人が一人で生きていくのは大変なんだなと分かりました。ティアラはヤンキーっぽく書きましたが、母もお嬢様だったけれど不良でもあったと思います。母が高校生の時にビートルズが来日したけれど、祖母にビートルズは不良が聴く音楽だからという理由でコンサートに行かせてもらえなかったんですよ。そのことと車の免許を取らせてもらえなかったことを恨んで、ちょっと不良化したみたいです。私は自分の中に不良性がゼロなので、母の不良感に憧れているところがあります。

(2)に続く