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史上4人目の「竜王・名人」豊島将之は、今年度の最優秀棋士に選ばれるのか

史上4人目の「竜王・名人」豊島将之は、今年度の最優秀棋士に選ばれるのか

棋界勢力図を分析すると……

2019/12/17
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前例を見てみると……

 過去の選考会時点で竜王・名人を維持していたのは1995年、1996年の羽生、1998年の谷川、2014年の森内で、来年4月の豊島は5例目となるのだが、過去の4例はすべて竜王・名人が最優秀棋士となっている。

 1995、1996年の羽生は七冠ロードの真っ只中だったので、最優秀棋士賞を受賞するのが当然ともいえる状況だが、1998年は谷川竜王・名人に対して羽生四冠と、タイトル数では羽生が上回っていた。2014年も羽生三冠で、やはりタイトル数では羽生のほうが多い。

9月5日に行われた竜王戦挑決第3局では、木村一基九段(当時)を下して挑戦権を獲得した ©相崎修司

 だが、当時の選考会をみると、1998年は投票の結果、15票中14票を集める圧勝で谷川が最優秀棋士賞となり、また2014年も12票中10票を集めた森内が最優秀棋士賞となった。いずれも競争相手を直接対決で制したことが評価の決め手となった。

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 では今年度の豊島―渡辺戦をみると、タイトル戦では棋聖戦五番勝負でぶつかり、これは渡辺が奪取。だが、銀河戦決勝では豊島が渡辺を下している。竜王戦の準決勝と王座戦の準々決勝でも豊島の勝ちで、トータルは豊島の4勝3敗だ。何とも判断が難しいといえよう。

竜王・名人をともに防衛した唯一の棋士

 無論これは渡辺が年度末に三冠を維持して、初めて議論の俎上にあがるだろう話だ。年明けから始まる王将戦に挑戦するのは広瀬で、タイトル失冠の屈辱を晴らしにくることは間違いない。また棋王戦には佐々木大地五段あるいは本田奎四段と、未知の相手が登場することが確定している。同時進行形で2名の対策を練るのは、いかな渡辺といえども簡単ではない。

竜王戦第4局での挑戦者・豊島将之名人と広瀬章人竜王。ここでは広瀬竜王が意地を見せて1勝を返したが…… ©相崎修司

 それをクリアすれば年度最高勝率(中原十六世名人の記録した0.855)の更新も見えてくる。実現できれば最優秀棋士の判断材料に加算されるだろう。また豊島も年度内のタイトル戦はないが、年度替わりに始まる叡王戦での挑戦権を得る可能性が残っている。こちらも挑戦者決定戦で豊島―渡辺戦が実現する目があるが、その結果も当然ながら選考の材料となるに違いない。

 2019年は豊島竜王・名人の誕生で幕を閉じたが、豊島は至高の地位を維持できるのか。実は竜王・名人をともに防衛したのは七冠ロード時代の羽生しかいない。豊島が2人目となれば、大棋士への道がまた一歩開けるともいえる。2020年の将棋界も要注目である。

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