3月7日に行われた第66回三段リーグ17、18回戦の結果、服部慎一郎と谷合廣紀という2人のプロ棋士が誕生した(四段昇段は4月1日付)。世間的にも大きな注目を集めた「三段リーグの一番長い日」を追ってみたい。
事実上は上位3名の争いとみられていた
まず、16回戦終了時におけるリーグの上位成績者は以下の通りである。
・13勝3敗 (4)※谷合廣紀
・12勝4敗 (2)※服部慎一郎 (21)西山朋佳
・11勝5敗 (7)井田明宏 (14)小山直希 (18)徳田拳士
カッコ内の数字はリーグ順位、※は次点経験
四段昇段の可能性を有していたのは以上の6名だが、井田以下は谷合を抜けず、また服部が1勝した時点で目がなくなるため、事実上は上位3名の争いとみられていた。
今期のリーグ最終日が大きな注目を集めたのは、西山に四段昇段の可能性があったためである。西山四段が実現すれば、史上初の「女性四段誕生」だ。過去、三段リーグを戦った経験のある女性は西山の他に里見香奈女流四冠がいるが、リーグ最終日に昇段の可能性を残したのは今期の西山が初めてである。
三段リーグで3位(次点)を2回取ると、通常とは別枠で昇段
だが、西山は四段昇段を自力でつかみ取れる立場になかった。自身が連勝し14勝4敗でフィニッシュしても、谷合と服部の両名に14勝されると昇段枠の2名に入れない。前期リーグの成績による「頭ハネ」が生じるからである。自身の連勝に加えて、谷合の連敗か服部の1敗という条件が必要だったのだ。
そして「次点2回によるフリークラス昇段」という規定が、さらに外野をやきもきさせる状況につながったかもしれない。三段リーグで3位を2回取ると、通常の昇段枠とは別枠で昇段できる。ただし、これは「フリークラス編入」による昇段なので、10年以内に規定の成績を挙げて順位戦に参加しないと引退を余儀なくされることになる。
16回戦終了の時点で谷合の3位以内は確定しており、また服部も1勝すれば最低でも次点は取れる。上記の通りこの両名は1個目の次点を持っているため、最終日を迎えた時点で四段昇段を逃す可能性は相当に低かった。