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羽生善治―佐藤康光の“黄金カード”が163局目 記者がもっとも印象に残った対局は……

羽生善治―佐藤康光の“黄金カード”が163局目 記者がもっとも印象に残った対局は……

これで同一カード歴代単独4位に浮上した

2020/03/16
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中原20歳でのタイトルと、大山66歳でのタイトル挑戦

 また大山と中原の年齢差は24歳で、これは100番指し達成はおろか、同一カード歴代20傑の中で、最も年が離れているカードである。両者が長年にわたって第一線で戦ってきたことの証明であり、かつ中原が相当に速い出世を実現した(20歳でのタイトル奪取は当時の最年少記録)ことと、大山の衰えなさ(66歳でのタイトル挑戦は現在に至る最年長記録)を示している。

 大山―中原戦における最後の20局をみると、中原が17勝3敗と圧倒しているが、大山が勝った3局のうちの2つが棋王戦の挑戦者決定戦及び敗者復活戦の決勝戦という急所である。タイトルを通算で64期獲得した中原だが、そのうち棋王獲得は1期と他のタイトルと比べて段違いに少ない。この舞台では米長、加藤という同世代のライバルの後塵を拝したことも一因だが、あるいは大山の棋王獲得(大山にとっては事実上唯一獲得歴がないタイトル)への執念が、そうさせたのかもしれない。

中原・米長、40年近く激闘を繰り広げてこその187局

 そして歴代最多同一カードは中原―米長の187局。第2位の羽生―谷川を20局近く引き離している。昭和50~60年代にかけての両者の激闘は、名字の一文字ずつを取って「米中戦争」とも呼ばれた。「奥さんより顔を合わせる時間が長い」と言ったという話もある。

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同一カード歴代2位の羽生ー谷川戦は、今年度も王位戦リーグで実現した。羽生が勝ち、歴代最多勝記録タイに並ぶ1433勝目をマークした ©︎文藝春秋

 またこのカードには米長四段対中原三段という一戦(米長勝ち)があるが、中原が奨励会時代の対局であるため、米長の通算対局数及び勝利数には記録が残るが、中原の通算成績には記録されない。同一カードの対局数にも記録されていない。

 中原―米長の初手合いは1965年(上記の四段対三段戦は1964年)で、最後の手合いが2002年。40年近くにわたって激闘を繰り広げてこその187局だ。