「過去最高って言ってもいいのかもしれないですね」
大会の締めに審査員のダウンタウン松本人志がこう語るほど、2019年のM-1は沸いた。では何がこの“神回”を作ったのか。出場した漫才師たちのインタビューから、その答えに迫っていく。
決勝7番手で登場し、史上最高の681点を叩き出したミルクボーイ。最終10番手で日本中をあっと驚かせたぺこぱ。その間、9番手としてM-1舞台を踏んだのがインディアンスだ。
年間400回以上舞台に立つ彼らは、同じ12月にTHE MANZAIに出場するなど評価が高く、お笑いファンの間で“隠れ優勝候補”と評判だった。そんな彼らが経験した「初のM-1」とは――。(全3回の1回目/#2、#3へ)
◆◆◆
「笑神籤(えみくじ)はヤラセだと思ってた」
――インディアンスさんの出番は9番目でした。そこまで待つのは、やはり大変でしたか。
田渕 早い方がいいなと思ってたんですけどね。
きむ 僕、笑神籤(えみくじ)はヤラセだと思ってたんですよ。
――本気で?
きむ はい。僕ら、明るいイメージが強いんで、ライブやネタ番組でもトップ出番が多いんです。盛り上げるために。なので、僕ら、また1番なんやろなと思っていて。
田渕 笑神籤が導入されてからは、17年はゆにばーす、18年は見取り図さんと、いずれも初出場組なんです。そこも、僕らは当てはまってるんで。
――ところが、トップバッターはニューヨークでした。
きむ そうなんです。で、次、かまいたちさんだったでしょう。それで、やばいと。笑神籤はガチやって。ヤラセで、優勝候補のかまいたちを2番目には持ってこないでしょうから。あの瞬間、ガチガチになりました。キュッと緊張してもうたんです。
ジャルジャルの後藤さんは「絶対ガチや」って
――でも、ヤラセだったとして、どうやって思い通りのクジを引かせるんですか。
きむ 芸人の間でいろんな噂があったんですよ。
田渕 めっちゃおもろい噂ありましたよ。誰か忘れたんですけど、決勝行った人が、笑神籤のボックスが6個あったって。1個のボックスの中を全部同じにクジにしとけば、誰が引いても同じコンビを出せるじゃないですか……って、そんなことあるか!ってあの日痛感しましたね。4回出てるジャルジャルの後藤さんは「絶対ガチや」ってずっと言ってましたもんね。
――やはり笑神籤システムは大変ですか。
田渕 あんなシステム、経験したことないじゃないですか。トップもあれば、トリの可能性もある。どのタイミングで出番が回ってくるかわからないので、テンションの起伏が激しくなっちゃいましたね。「今、呼んでくれ。ああ、ちゃうんか……」みたいな。そこで1回、疲れちゃう。で、またネタが終わって、「来い! ちゃうんか」と。そんな感じで、9番目まで引っ張られちゃったんで。
「笑ってるツッコミが好きじゃない」発言の影響は?
――この大会は本当にいろんなことがありました。まず、1番目のニューヨークのネタの後の講評で、審査員の松本(人志)さんが、笑ってるツッコミが好きじゃない、という趣旨の発言をされました。あの言葉の影響はありましたか。