クルドの伝統衣装で決めるムスタファさんがいよいよ調理を
さて、いよいよチーキョフテ作りである。調理を担当するのはワッカスさんの友人で同じくガジアンテップ出身のムスタファ・ポラトさん。背の高いイケメンの若者だ。彼はクルドの伝統衣装で決めていた。頭には黒と白の格子模様のターバン、黒い腰巻き、そしてヤギの毛で織ったゆったりしたズボン。
さらに時節柄、両手にビニールの手袋をはめ、顔にはマスク。クルドとコロナ対策のコラボレーションとも言える奇妙な出で立ちだ。
お店の窓は全部開放。肌寒い風が容赦なく入ってくるが、三密を避けるためなのでしかたない。
クルド人は日本同様、靴を脱いで家にあがり、床に直接すわる。なので、今日も店の床に絨毯を敷き、そのうえで調理を行う。
面白いのは、「テプシ」というお盆のような金属の平たい器。底に細かい凹凸がついている。「これはチーキョフテを作るための道具です」とワッカスさん。専用調理器具があるとは思わなかった。やはり本場の人たちはちがう。
チーキョフテを作るのは重労働
このテプシの中に、まずブルグル(2ミリくらいの大きさの小麦粒)、ニンニクのみじん切り、コショウ、シナモン、唐辛子粉、クミンを入れ、手で底に押しつけるようにして練り混ぜる。ときどき唐辛子粉入りの水をかけ、湿り気を与える。
5分後に、唐辛子粉入りの水をボウル1杯分入れ、さらに練る。この時点で味見すると、スパイスと穀物(生の小麦)のミックスでかなりピリ辛。
15分ぐらいしてからようやく挽肉を投入。今日は牛肉である。
重労働に耐えかねてムスタファさんの片方の手袋が破れ、新しいものに交換。彼は味見しようとするが、口にはマスクをしているし、自分でマスクがとれないので、他の人にマスクを外してもらってから練り物を口に入れている。コロナ禍の最中に生肉ハンバーグを作るのはなかなかハードルが高い。