阪神淡路、東日本と、震災の時のテレビがどうだったか実際に見てたし、何か有事の際のテレビというのも何回となく見てるが、今回の新型コロナウイルスによってもたらされたテレビの様相は今まで見たことないものであった。

 激しい変化があったわけではない。ワイドショーもバラエティもやってるがスタジオ内が距離を取ってスカスカ。ゲストのリモート出演。過去ネタの再使用が増える。民放地方ワイドではやたら「阪神タイガース戦いの軌跡」みたいのをやっていた。とにかくロケができないことによる水増し作戦だ。サザエさんも再放送。天災や大事故とは明らかに違う。ゆるくなごやかで、かつ非常時。こんな状態のテレビは初めて見た。

 そんなコロナ禍テレビで突出したものを見た。『坂上忍の勝たせてあげたいTV 逆境に立ち向かう競輪選手の今』。

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 これ、日本選手権競輪(競輪最高峰レース)の決勝戦中継のために枠取ってたんだ。競輪界として今年は勝負の年だったんです、東京五輪があるから。競輪はとにかく「なんとかイメージアップしたい、そのためには選手が五輪でメダル取る」を悲願としており、大レースはいつも五輪がらみの競技ネタを、レースそっちのけでぶっこんできていた。五輪目前となればイヤでも盛り上がるはず! と。

 そしたら五輪延期ですよ、そして日本選手権も中止ですよコロナで。どうすんの放送枠。しょうがないから、ナショナルチームがいかにがんばってるかとか、期待の若手紹介とか、モーグル銅メダル選手が競輪に転向したのとか、女子選手の手洗い指導(……)とか流していた。過去の名勝負を流しまくったほうがいいと思うのだが。

写真はイメージです ©iStock

 主催者はこの放送に賭けてたのがビンビン伝わってきて気の毒でしょうがない。司会には「ギャンブル中継は今やこの人」の坂上忍、ゲスト武井壮、進行に田中みな実。リモート出演中野浩一。

「五輪もなけりゃレースもない」中、坂上忍も武井壮も目の玉が飛び出すようなテンションでがんばっていた。

 その中で田中みな実が、思わず目が行ってしまうほど、気の抜けた顔してるの。ワイプで抜かれても表情なかったりして、いつも完璧にホンワカ可愛くキメてるから珍しいもん見たと目が釘付け。競輪なんか興味ない&この状況じゃムリもないけど、仕事はちゃんとやってほしい。

田中みな実 ©AFLO

 放送枠売り払えなかったのか。がんばる坂上&武井の横で、気の抜けてる顔した田中みな実のほうに目がいってしまって見終わったらそればっかり思い出してしまうという、気の毒な番組だった。競輪踏んだり蹴ったり。レースは仕組みわかれば面白いのに!

INFORMATION

『坂上忍の勝たせてあげたいTV』
日本テレビ系 5/10(日)放送 穴ウメ特番
https://www.ntv.co.jp/kataseteagetai/