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連載クローズアップ

渡辺いっけい初主演で“悪魔の男”「演じるのは楽しい半面、心を読み解く難しさがあった」

渡辺いっけい(俳優)――クローズアップ

『いつくしみふかき』は、渡辺いっけいさんにとって初主演映画となる。

 山に閉ざされた村で、騙り、盗み、女を孕ませ、悪魔と呼ばれた男が村を追われた。渡辺さん演じる広志(ひろし)だ。そして30年後、息子もまた村を追われる。悪魔の子と虐げられて――。やがて親子とも知らずにふたりは出会う。繋ぐのは、絆ではなく血と業。それでも親子の物語である。

渡辺いっけいさん

「広志は詐欺師としていろんな顔を持っています。それは演じていて楽しい半面、ときに台本から心理を読み解きづらい場面もありました。その僕のモヤモヤに、大山晃一郎監督はしっかり考えを示してくれた。だから全編を通すと、得体の知れない男が作品の中で生きていました。人物像のバランスをとった、監督の力量を感じましたよ」

 息子の進一を演じるのは、「劇団チキンハート」主宰の遠山雄。本作の企画・製作にも携わっている。

「遠山君とは6年前にドラマで共演しています。僕が刑事で彼は犯人役。ほとんど台詞のない役だったけど、芝居に、作為的ではない人間の面白さ、風情が出ていた。ドラマの助監督だった大山君に彼のことを訊ねると、一緒に劇団をやる仲間だったんです」

 そのふたり――大山晃一郎と遠山雄が、文字通り泥まみれになりながら公開へと漕ぎつけた本作は、自主制作ながら異様な熱を放っている。

「舞台でもある長野県飯田市の人たちの協力なしには作れませんでした。ただ、物心ともに援助を受けた映画は、観光PR的になってしまうことがある。でも彼らは地元の特産や伝統芸能、風景を、上手に、したたかに自分たちの物語へ取り入れたと思います」

 渡辺さんにとっても、大きな意味を持つ作品となった。

「役者としてそれまでと違うことをやりたい、声をかけられたのはそんな時期でした。この作品は、お客さんに見られることで、大きくなっているように感じます。そういう意味でも面白いんですよ」

わたなべいっけい/1962年愛知県生まれ。ドラマ、映画、舞台など幅広く活躍。アニメ『おしりたんてい』でナレーション他も務めている。

INFORMATION

映画『いつくしみふかき』
6月19日(金)より、テアトル新宿ほか全国順次公開
http://www.itukusimifukaki.com/

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