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なぜ韓国語で会話をする前には必ず「序列」を確認しなければならないのか

『「高文脈文化」日本の行間~韓国人による日韓比較論~』より #1

2020/07/06

genre : ライフ, 歴史, 社会

相手への敬意のレベルによって3つに分かれる「待遇」

 敬語をまったく使わないから敬語システムが崩れることもあるでしょうけど、この場合、間違った形で使っての崩壊となります。文法が変わったという意味でもありません。ただ、実生活でその言葉を使う人たちが、自らの意志でその敬語システムを崩しています。

 言語において敬語というのは、決して人の上下を決めつけるためだけに存在するものではありません。そんなものは、真の「敬」の意味を実現できません。とはいえ、あまり話が複雑になると困りますので、言語においての敬語を、三つのレベルに分けてみましょう。せっかくですから、韓国でよく使う「尊・下」の字をそのまま用います。

 まず、始めに、「私」が「相手」に尊敬語を使う場合、私から相手への関係を「尊」に相応する「待」遇という意味で「尊待(ジョンデ)する」と言います。

 次に、「私」が「相手」を見下す論調の言葉を使う場合、私から相手への関係を「下」への相応の「待」遇とし、「下待(ハデ)する」と言います。

 最後に、「私」と「相手」が、同等な立場で、例えば友だち同士でタメ口で話し合う、または丁寧語など適切な敬語を使い合う仲なら、二人の関係は「平(ピョン)」とします。相応の待遇を「平待(ピョンデ)する」と言います。

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平待はあまり議論に上らない

 韓国語に知識がある方なら、「尊待と下待なら聞いたことあるけど、平待というのもあるのか」と思われるかもしれません。実はそこが、本書の内容とも密接に関わっている部分ですが、尊待語と下待語は韓国語関連でよく目にしますが、「平待」はあまり議論の対象になりません。平待語は「平語」とも言います。

 まとめますと、AとBの二人が会話するとして、A氏がB氏に尊敬語を使い、B氏はA氏に見下すような語調しかしないなら、AはBを尊待する、BはAを下待する、になります。AとBがこれといって上下区別なしに話し合う仲なら、それは平待し合う関係になります。分けようとすればもっと細かくできますが、本書での趣旨を論ずるにはこの三つのレベルで十分でしょう。

 ビジネス関係や、集団内の職位による関係、または会ったばかりの人との会話(会ったばかりの人にタメ口をきく人はいないでしょう)を除外するなら、読者の皆さんの周辺には、どんな人がどんな人に対して、尊・平・下のうち、どんな語法、どんな論調を使っていますか。また、そのニュアンスはどうですか。

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