このまま感染拡大が終息しなければ、秋冬にかけて感染が爆発し、ふたたび緊急事態宣言を発出せざるを得なくなるかもしれない。しかし、長期間の自粛は経済に対する副作用(ダメージ)も大きい。予防と経済を両立させるためには、どんな戦略をとるべきなのか。ハーバード大学公衆衛生大学院で臨床疫学を修めた総合診療の第一人者・徳田安春医師(沖縄群星臨床研修センター長)に話を聞いた。(全3回の3回目。#1、#2から続く)
※インタビューは2020年7月20日、リモートにて実施
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一斉自粛は経済への副作用が大きすぎる
──感染が拡大しているエリアをマイクロレベルで捉えて徹底検査を行い、陽性者を保護隔離していく。そうやってコロナを封じ込めていくべきだというのが徳田先生のお考えでした。東京都では、そのような明確な戦略で検査を行っているのでしょうか?
徳田 区によって差があるように感じます。たとえば新宿は区長のリーダーシップで、陽性者に10万円を支給するという政策を打って、検査を積極的に行っていますよね。しかし、そうでないエリアもあります。自治体首長のリーダーシップも大切です。
コロナの流行はすべてローカルエリアから拡大していきます。ですから、ローカルエリアでの流行を小さなうちに潰すほうが、たやすいのです。実際問題として、国全体で緊急事態宣言を出したり、東京全体で自粛したりするのは困難です。経済に対する副作用が大きすぎることは、この前の緊急事態宣言でわかりました。再び自粛をしたら倒産や失業者がますます増えて、人びとの生活が苦しくなります。世界ではすでに、「国全体でのロックダウン(封鎖)」はなるべくするな、と言っています。
「サーキットブレーカー方式ロックダウン」という考え方
ブレーカーというのがあります。許容量以上の電流が流れたら、スイッチがオフになって、回路が飛ばないようにする装置です。「サーキットブレーカー式ロックダウン」と言うのですが、ロックダウンするにしても、実効再生産数などの指標となる数値を超えたエリアだけオフ(ロックダウン)にするという考え方です。シンガポールなどはその方式をとって、封じ込めに成功しています。
一方、台湾(直近3カ月間以上も連続で新規陽性者数ゼロ)のように完全に封じ込めに成功しているところは、すでに空港での水際対策だけがメインになっています。検査数もやや少なくなりました。封じ込めに成功すれば、そのような小さな対策だけですむようになるのです。
日本で今以上に感染が拡大し蔓延したら、入院患者や重症者が増えて医療が逼迫し、また都道府県単位や国全体で自粛せざるをえなくなるかもしれません。こうした事態は、避けたほうがよいと思います。