6月末から7月末にかけての感染拡大では、重症者や死亡者は第1波に比べて増えなかった。しかし、秋冬に本格的な第2波が来れば、ふたたび亡くなる人が増える恐れがある。それを防ぐために、今、どう備えておくべきなのか。ハーバード大学公衆衛生大学院で臨床疫学を修めた総合診療の第一人者・徳田安春医師(沖縄群星臨床研修センター長)に話を聞いた。(全3回の2回目。#3に続く)
※インタビューは2020年7月20日、リモートにて実施
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「医療崩壊論」は間違いだった?
──感染者数が増えたのは、これまで4日以上発熱がある人や流行地に渡航歴がある人などに絞っていた検査対象を、濃厚接触者や軽症者にも広げたことが大きいというご指摘でした。政府や東京都、政府のコロナ分科会等も、検査数が増えたことには言及していますが、戦略を変えたのだということを、なぜかはっきりとは言いませんね。
徳田 それを認めると、これまでの対策が間違っていたことになるからかもしれません。検査を増やしたら陽性者があぶり出されて、入院患者が増えて、病院が逼迫するという「医療崩壊論」に立脚していたのです。
でも、それは本末転倒ではないですか? どうして病院が逼迫するのかというと、法律で「指定感染症」としてしまったからです。途中から、宿泊施設や自宅待機も容認しましたが、法律に従うと、感染者は原則として全員入院させなくてはなりません。全員入院させたら、ベッドが不足するのは当然です。入院は重症者と高リスクの人に限り、軽症者や無症状者は、宿泊施設に入ってもらうようにすべきなのです。
これまでのような戦略で、軽症者や無症状者が検査を受けられない状況では、ふたたび感染が拡大し重症者も増えますから、むしろそのほうが病院は逼迫します。
PCR検査の「偽陰性」をどう考えるか
──徳田先生は、以前から検査を積極的に増やすべきだと主張しています。しかし、検査の精度は100%ではなく、「陰性」と出ても実際には感染している「偽陰性」がPCR検査では約3割に出るとされています。検査をやみくもに行っても「陰性」と判定された人が安心してしまい、感染を広げてしまうという議論がありました。私も、そう考えていたのですが、違うのでしょうか。
徳田 コロナの検査では、「診断」のための検査と「防疫」のための検査を分けて考える必要があります。診断を行う場合には、感染している確率の高い人に検査を行わないと、感染している人を正しく「陽性」と判定する「陽性的中率」が下がってしまいます。ですから、医師が「コロナの疑いが強い」という人に絞って検査を行わないと、医療の無駄遣いということになります。