文春オンライン

「PCR検査を増やせば医療崩壊」は本末転倒 こっそり方針転換した“コロナ戦略”の盲点

コロナ感染再拡大――徳田安春医師インタビュー #2

2020/07/29
note

「感染リスクの低い無症状者」にも検査は必要?

──7月16日、政府のコロナ分科会は検査対象として、(1)有症者、(2)感染リスクの高い無症状者(無症状+事前確率高)、(3)感染リスクの低い無症状者(無症状+事前確率低)という3つの分類を提示しました。そして(1)と(2)、つまり症状のある人や濃厚接触者の検査を公費負担で優先して検査して、(3)については自己負担を原則とするとしました(筆者注:「事前確率」とは、検査や診断を受ける前に予想される感染確率のこと)。

©iStock.com

徳田 (1)と(2)を検査対象にするのは当然です。しかし、(3)を積極的な検査対象から外すべきではないと私は思います。「無症状+事前確率が低い」は正確には、「無症状+事前確率不明」と「無症状+事前確率が低い」の2つに分類すべきです。接触歴が不明な人は、「事前確率不明」となるからです。

 たとえば、前日に歌舞伎町に行って、お店をはしごした人が翌日新幹線に乗って盛岡で降りたとしたら、その人はすでに「事前確率が低い」とは言えない。1人も陽性者が出てないからといって、岩手県民全員が「事前確率が低い」とはならないのです。事前確率は、どこに住んでいようと、個別に判断しなければいけない。感染しているかどうか不安という人や、感染しているかもしれないという心当たりのある人は、接触歴の疑いがあるか問診を行って、その疑いがあれば事前確率が高いので、検査したほうがいいでしょう。

ADVERTISEMENT

ホットスポットをマイクロレベルで捉える

──ただ、検査積極論者の中には、日本全国民に検査を受けさせるべきだと主張する人もいました。しかし、いくら検査体制を拡充して1日の処理能力が100万件になったとしても、1億人に受けてもらうには最速でも100日以上かかる計算です。それは非現実的ではないですか。

徳田 我々は「闇雲に検査をせよ」と主張してはいません。たとえば、岩手県で大規模検査を行うべきと言っているわけではありません。感染者の少ないエリアでも、問診で接触歴ありの疑いの人は、無症状でも検査対象としてよいかと思います。また、そのような地域で感染者が出た場合は、接触追跡して、保護・待機をしてもらう。

©iStock.com

 しかし、感染が拡大しているローカルエリアに住んでいる人や仕事で出入りしている人に対しては、クラスター対策だけでは不十分で、徹底検査をめざすべきなのです。しかも、東京都や新宿区や世田谷区という大エリアでなく、ホットスポットになっている「歌舞伎町△丁目」といったマイクロレベルで捉えて、行うべきです。そして、陽性者を保護・隔離していく。そうやって、コロナを封じ込めていくべきなのです。

「PCR検査を増やせば医療崩壊」は本末転倒 こっそり方針転換した“コロナ戦略”の盲点

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー