旅行者の検査は完璧でなくてもいい
徳田 こうしたことを約束として、GO TOトラベルに参加してもらえばいいんです。そうすれば、医療機関に負担をかけることもありません。経済を動かすのであれば、感染拡大を個人や企業に責任を転嫁させるのではなく、政府も責任を持って、それくらいの努力をするべきと思います。
旅行者を検査する場合には、必ずしも感染者を全員ひっかける必要はありません。たとえば、沖縄には東京から1日30便以上もの飛行機が飛んでいます。1つの便に100人乗っているとして、1日に3000人沖縄に来るわけですが、その中に4人感染者がいるとしましょう。そのうち2人を見つけて隔離するだけでも、かなり違います。
なぜなら、感染者を半分に減らすだけでも、R(実効再生産数=1人の感染者が平均何人感染させるかを示す数値)を半分に減らすことができるからです。たとえば、Rが1.4であれば、感染症疫学の原理から、R>1なので感染は拡大します。しかし、この介入によりRが1.4→0.7に下げるだけで、R<1なので感染は収束します。
経済と感染拡大阻止を両立するために
──そうすれば、GO TOトラベルと感染拡大阻止を両立できるわけですね。もう一つ、GO TOトラベルを実施するなら、「陽性率の高いエリアの人は外に出るな」と言うべきではないですか。
徳田 そうです。「東京を除外する」とか、「東京の人は4連休自宅で過ごして」といった大雑把な括りではなく、自粛要請は流行が拡大しているローカルエリアに限定すべきです。そうでないと、不公平ではないですか? 東京でも、奥多摩や小笠原諸島などは、全然陽性者が出ていません。都道府県とか国全体とか、そういう大雑把なエリアでやるのではなく、自粛はできるだけローカルエリアで行うほうが、経済的なダメージも減らせます。
集団に免疫の無い致死的感染症への対策は、流行範囲が小さいうちに封じ込めるのが原則です。政府はどう対処するのかの戦略を明確にし、本格的な波が来る前にコロナを封じ込めてほしいと願っています。
2020年5月5日に提出した我々の提言書も再掲示しますので、参考にしていただければ幸いです。https://blog.goo.ne.jp/yasuharutokuda/e/87c6aa91c5bab97abcc1da6504b72b0d
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関連書籍:『こんなときオスラー『平静の心』を求めて』著:平島修/徳田安春/山中克郎(医学書院)
関連サイト:ニューヨークタイムズ紙「安く簡単にできるコロナのコントロール法」2020年7月3日(A Cheap, Simple Way to Control the Coronavirus. With easy-to-use tests, everyone can check themselves every day. By Laurence J. Kotlikoff and Michael Mina)