3 妻の人となりについて
妻は、とても器の大きな人でした。子供が生まれて夜泣きしても、「赤ちゃんはそういうものよ」と言ってイライラすることはありませんでした。私は妻の包容力に感心しました。
どんな時も相手の立場にたち、「こういうことをしたら喜ぶかな」ということを常に考えていました。人に対する思いやりの気持ちが強く、人や物に対する感謝の気持ちを常に抱いている人でした。誰に対してもいつも「ありがとう」と言っていましたし、自分が愛用するものは長く大事に使っていました。10年ほど前、私が仕事上の人間関係で辛い時期があって悩んでいたのですが、妻は「何があってもついていくよ」と励ましてくれて、それが転機となって転職することができました。私のわがままも飲み込んでくれて、夫婦喧嘩はほとんどありませんでした。どちらかというと、私が妻に甘え、妻が私を受け止め、包み込んでくれていたと思います。私は妻を、一人の人間としてとても尊敬していました。
手芸などの細かい作業が得意で、子供が学校で使う上履き袋なども子供たちが好きな布地を使って手作りしましたし、子供のために手袋を編んだり、私の誕生日に手編みのセーターをプレゼントしてくれました。料理も常にカロリーや栄養のバランスを考えて作ってくれました。子供たちが大好きなメニューは手作りハンバーグでした。メニューのマンネリ化を防ごうと工夫し、例えば鶏の唐揚げに、ネギを甘辛に炒めたものをトッピングしたりして、食卓はいつも華やかで温かみにあふれていました。
娘たちのことは、「健康で優しい人に育ってほしい」と言っていました。そして、娘たちが結婚する時に持たせるのだと言って、生まれた時から1年ごとのアルバムをコツコツと作っていました。私と妻は、「娘たちのウエディングドレスを見るのが楽しみだね」等と話していました。
また、妻は、エンディングノートを書いていました。若くして病気で亡くなる人もいるので、後に残された人が困らないように、と言っていました。人に対する気遣いができる妻らしい考え方だと思います。私は、妻がエンディングノートを書いていること自体は知っていましたが、何を書いているのかは知りませんでした。妻が亡くなってから読んでみました。そこには、「結婚してくれてありがとう」「子供を授けてくれてありがとう」等と書かれ、二人の娘につけた名前の由来も記されていました。私を愛してくれていたことがよく伝わる内容でした。「こんな言葉を残してくれてありがとう」という感謝の気持ちでいっぱいです。