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 弁護人、検察官、裁判体(裁判官と裁判員の合議体)が被告人質問をして、その中で被告人は「6人殺しました」と言いました。私は、こいつは事件を知っている、と思いました。間で変なことも言っていますが、私は「分かっているな」と直感しました。

 私も被告人質問をしました。私は、なぜうちの3人だったのか、そしてなぜ殺されなければならなかったのか、ということをどうしても被告人に直接聞きたかったからです。ただ、2年半待ち続けて、たったの30分しか質問できないことは、無念でした。被害者自らの質問で、30分という長さは異例だそうですが、私にとっては短すぎました。そして、被告人は、私の質問を全てはぐらかしました。「やってない」というならまだしも、質問に正面から答えなかったことに強い怒りを覚えました。被告人には、この後、最後に自分の意見を述べる機会が残されています。私のこの意見陳述を聞いて、真意を話す機会があるということです。最後に必ず、私の質問に答えてほしいと思います。

 被告人質問の後、悔しくて腹が立ってどうしようもなかったです。被告人が質問に答えず、はぐらかしてばかりだったからです。被告人は至近距離にいましたから、飛びかかって殺してやりたいとずっと思っていました。その日の夜は、怒りと興奮でさらに眠れないだろうと思っていましたが、自分で思っている以上に全身が疲労していたようで、いつもより早く眠りました。いえ、眠ったというより、倒れてそのまま起き上がれないような疲労感でした。

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※写真はイメージ ©iStock.com

10 この事件について思うこと

 この事件で悪いのは被告人であることは、よくわかっています。ですが、事件の日、妻が外出していたら、とか、娘たちが友達の家に遅い時間までいたら、とか、私が会社を早退していたら、など、「こうしていたら事件にはならなかった」ということを色々と想像してしまいます。しかし、裁判を通じて感じたのは、被告人が最初に警察に行きたいと言っていて、実際に警察に行ったのだから、あそこで取り逃がしていなかったら、6人の命は奪われなかっただろうということで、その気持ちが一番強いです。そして、取り逃がした後も、不審な外国人についての通報が続いたのに、なぜ地域住民に広報を徹底しなかったのか。その点についての疑問が私の中から消えることはありません。

11 終わりに

 妻の人生、娘の人生はなんだったのでしょうか。被告人のような人間に殺されるような何かをしたのでしょうか。正直なところ、私は悲しみや怒りの気持ちを自分自身で抱えきれずに苦しんでいます。この裁判の結果は、私の今後の人生にとても強く影響します。被告人の刑を決める皆さん、自分の家族が全員殺され、ある日一人になったら、どう思いますか。犯人が精神障害だったから、それは災難でしたね、ということで諦めるのでしょうか。そういう視点で、自分のこととして考えていただきたいです。

以上

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