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定期的に繰り返される陰湿なネグレクト

 そしてまた2か月くらい経つと、「匙を投げた」などと言い放って陰湿なネグレクトがまた何か月も続く。これを延々と繰り返す。この振幅の大きさが異常行動そのものだ。

 特に1999年、私が高校2年の時には、「太陽の黒点現象の異常か?」と思うほどその期間は長く続き、母は約7か月間、私と一切の会話を拒否して、狭いマンションの中で私の存在自体が透明人間の如く存在しないように振る舞い、無視し続けた。

 正直いって、これが私の精神にとって最も過酷な虐待であった。単に罵詈雑言を浴びせられるだけのほうがまだマシである。存在すら認めないというネグレクトは、相手(私)を疲弊させ、その精神を追い詰めていく。

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 これを全く異常な仕打ちと認識していないところが異常者たるゆえんである。私の母は、あろうことかネグレクトの長期・短期を問わず、男子である私の思春期にとって、最も恥ずかしい行為を平然と行った。

自慰行為の痕跡を調べ上げられる

 具体的には私の部屋のゴミ箱を全部子細に点検して自慰行為の痕跡を調べ、自慰によって固まったティッシュの塊を全部選別して、高校から帰ってきた私の部屋の勉強机に、これ見よがしに「奇麗に」並べて陳列するという奇行に及んだ。そしてこの時だけ、「ち○ち○、掻(か)いてばかりいないで! そんな場合じゃない! 勉強しろ!」などと、わざと早朝、父親のいる目の前で言葉を発するのである。そう、私が恥をかく表情を見て愉(たの)しんでいるのである。

©iStock.com

 思春期の男子ならば、当然蒐集(しゅうしゅう)しているのが自然な所謂「エロ本・エロ雑誌」(当時はまだまだインターネットの黎明(れいめい)期で、エロ情報の主力は依然として紙媒体であった)の最もいやらしい修正箇所を、これまた私が登校中に全部ベッドの下や勉強机の隙間などから探し出し、これ見よがしに勉強机の上に広げて陳列する。

 私は現在でもそうだが、外国人( 人種は問わない) の巨乳モノが好きで、当時「BACHELOR」という洋物巨乳雑誌(現在も刊行中)の愛好者であった。その「BACHELOR」の最もいやらしいページが、学校から帰ってくると勉強机の上に「どや」とばかりに開陳されているのである。頭がおかしくなる。

 ここまでくると、これは単なる虐待というよりは性的虐待である。思春期の男子にとってこれ以上の恥辱は無い。私はこのころになると、いつ母と刺し違えてもよい、と思うようになった。が、こんなクズのために家庭裁判所送りになるのは人生の損だ、と何度も何度も考え直して母の殺害をすんでのところで踏みとどまった。

 しかし踏みとどまった代償は、私の精神に強度のストレスとして蓄積されていく。当時の私は、そのメカニズムを知らなかった。母による虐待に何百回も耐えたが、そのたびに私の精神は金属疲労のように、不可逆的に摩耗していったのである。