後半は、原作小説「電車を止めるな!~呪いの6.4km~」とまったく異なる展開になった。映画本編全体は大胆にも、ブルース・ウィリス主演の某ハリウッド作品のオマージュだ。私は中盤のある場面ですぐに気がついたけれど、これはたまげた。そして笑った。
『電車を止めるな!』は『カメラを止めるな!』の成功にあやかって制作された。タイトルと「ホラー映像作品を作る」という主題が同じ。物語はまったく違うけれども、随所にちりばめた伏線がある点は共通した面白さ。初めて観るときは、ひとつひとつのシーンを見届けよう。伏線を確認するために、もう一度観たくなってしまうところも似ている。
ホラーコメディ映画にピッタリの上映会場も
似ていないところは予算と興行成績だ。『カメラを止めるな!』が制作予算300万円で、2018年の興収が年間31億円を突破した。それをヒントに「500万円を集めたら作れそうだ」と安易な発想でクラウドファンディングに成功したけれど、実際には2000万円かかった。足りない分のうち800万円は協賛金を募り、竹本社長自ら700万円の持ち出しとなった。『カメラを止めるな!』が300万円でできた理由は、それだけの知識と研鑽があったからだ。誰でもマネできる作り方ではない。
初速の遅さは似ている。『カメラを止めるな!』は当初は映画イベントで6日間の上映で、単独上映は2館からスタート。口コミで人気が拡大して全国ロードショーへと上り詰めた。『電車を止めるな!』はいまのところ上映館が少ない。飲食店や公共施設の会議室などだ。ユニークなところでは千葉県いすみ市の葬祭場(11月3日)もある。ホラーコメディ映画にピッタリ、というか雰囲気ありすぎだ。
劇場初公開は9月26日の高田世界館だった。現存する日本最古の映画館とのこと。竹本社長と懇意のえちごトキめき鉄道の鳥塚社長が働きかけたという。上映後に両社長のトークショーがあって、伏線の解説や撮影秘話なども語られた。
銚子電鉄はいままで、「オマージュかパクりか」というギリギリのセンで「まずい棒」「バナナカステラ」を販売し、売上を伸ばしていた。最近ではアイスキャンディの企画がシャレにならない理由でボツになった。そんな銚子電鉄が、超有名なB級映画にそっくりなタイトルの映画を作った。どうせまたネタ映画だろうと思ったら、実は真面目に取り組んだ映画だった。
上映映画館は現在も募集中。観たい人々の要望に応えて、少しずつ上映場所も増え、全国に広がっている。そろそろ配給会社に参加してもらい、全国ロードショーにしたい。鬼退治アニメ映画で儲かった映画館さん、この映画を応援していただけませんか。『電車を止めるな!』の勢いを止めるな!
(文中敬称略)、写真=杉山淳一