次第に変質していった「殺害の動機」

 2人は眠ってしまったが、先に起きたのが白石被告だった。そのとき、「寝ている姿を見て、レイプをしようと考えました」と証言する。Aさん、Bさん、Dさんを殺害した動機は、ヒモになれないなら、レイプして殺害し、所持金を奪うというものだった。しかし、5人目の被害者・Eさんは、見極めが曖昧なまま、帰ってしまわないように殺害している。そして、Fさんは、ヒモになれそうだと判断したにもかかわらず、レイプしようと考えた。殺害の動機が変質していっている。

「Fさんの寝ている姿を見て、起きないように性行為をするか、起きてしまったとしても、抵抗できない状態で性行為をしたくなりました。そのため、ロフトの階段の下に布団を敷き、眠っているFさんを移動させ、布団の上に仰向けで載せ、後ろ手に結束バンドで縛り、足が動かないように両膝のところをビニールテープで縛りました。ロフトの階段から吊るしたロープの輪のところに首をひっかけました。目が覚めても、すぐに失神させることができますから。両膝が宙吊り状態で、そこから性行為をしました」

事件現場 ©文藝春秋

 ただし、途中で、Fさんの目が覚める。その後の情景について、検察官や弁護士の質問に詳細に答えた。

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「途中で覚醒したとしても呼吸ができないように、口や鼻にガムテープを貼ろうとしました。口にガムテープを貼るときは、誰のときでも、真横に貼り、さらにバツ印になるように、3枚にして貼っていました。

 しかし、真横に貼った段階で、覚醒してしまいました。そのときに、テープの片側がビラビラしていたのを覚えています。口の左側が剥がれていました。完璧に貼っていたら声がでない状態ですが、剥がれていたので、大声をあげられたら困るので、首にあるロープを使って失神させました」

白石被告の裁判が行われている東京地裁立川支部 ©渋井哲也

きちんと回答したのは30問ほどだった

 その後の手順は、これまでの被害者と同じだ。ただ、白石被告は、一つだけ自らの回答の撤回を申し出た。

「犯行当時のことについて、先ほど、弁護側の質問に、『捜査段階の記憶のほうが新鮮なため、基本的には、裁判の証言ではなく、取り調べ段階の記憶が正しい。しかし、録音、録画しているわけではないので、100%正しいとは言えない』と言いましたが、『大まかなことでは断片的な記憶があります。しかし、具体的な時刻などはわからない』に訂正します」

 10月29日、Fさんの事件に関する弁護側の被告人質問は、検察側の後に行われた。弁護側は、細かなやりとりを含めると120問以上、質問した。しかし、白石被告は80問以上については、小さな声で「黙秘します」と続けた。一方、「はい」「覚えています」など簡単なやりとりを含め、きちんと回答したのは30問ほどだった。

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