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 しかし、世界の状況はまったく違います。世界全体ではHIV陽性者の約半数を女性が占めており、男女間での感染が主流です。2018年の新規感染者のうち、男性同性間の性的接触による感染は17%に過ぎないのです。この先、もし日本の異性間での感染ルートにHIVが持ち込まれた場合、そこで急激な感染拡大が引き起こされる可能性があるのです。皆さんが思っている以上の警戒が必要です。

HIV、エイズ検査の実態

 エイズが厄介なのはHIVに感染してもエイズ発症まで自覚症状がなく進行することです。ですから、“自分はHIVに感染したのではないか”と疑い、自ら検査を受けない限りは感染していてもその有無を確認することはできません。

 HIV検査は血液検査(約5㏄の採血)です。保健所であれば匿名、無料で受けられます。一般的な医療機関でも匿名で受けられますが、検査費用は自費となります。

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 検査は2段階で行われ、最初はスクリーニング検査が行われます。現在は「抗原抗体検査」が主流です。これで「陰性」なら、HIVに感染していないことになります。「陽性」または「判定保留」であれば、「確認検査」を実施します。それはスクリーニング検査では0.3%の割合で「偽陽性」が発生するからです。HIV感染を確定するには、スクリーニング検査が陽性、確認検査が陽性の2つを満たすことが必要になります。

 スクリーニング検査は1~2種類のHIV構成タンパクに対する抗体を検出して調べますが、確認検査ではHIVのすべての構成タンパクの抗体を調べます。

 ただし、先に述べた通りスクリーニング検査が陽性で確認検査が陰性であれば、HIV感染はないといえるわけではありません。スクリーニング検査が陽性で確認検査が陰性または判定保留の場合には、今度はHIVのRNA遺伝子を抽出し、ウイルス遺伝子の存在を確認する「NAT(核酸増幅法)検査」を行います。この検査で陰性であれば、ようやく「感染なし」が確定するのです。

検査を受けるタイミングが重要

 しかし、これらの検査は、HIVの感染からある程度の期間が経過していないと正確な結果が出ません。ですからHIV検査は受けるタイミングが重要になります。感染から体内にHIVに対する抗体が産生されるまでの期間が必要だからです。早く検査を受けてしまうと、抗体がつくられていないので陰性の結果が出てしまいます。

 今の検査の多くは感染の機会から2カ月後から受けられますが、NAT検査はウイルス自体を調べるので2週間後から受けることができます。