文春オンライン

トップを走る松屋を、吉野家が猛追…2020年に「牛丼カレー界」に起きた異変

2020/11/27
note

吉野家の魅力の本質を捉えた、「粋」でカッコいい味

 その吉野家の新カレー、風味自体は「ボンカレー」の時代に後戻りしたようなクラシックなものですが、味わいの下支えはかすかな和ダシや醤油でしょうか、その分動物性の油脂やエキスに頼りすぎる事なくソリッドな仕上がりです。濃度だけでなく味にも余分なモッタリ感が無い分、ジャパンクラシックな配合のスパイスが華やかに香ります。そしてこの引き算のカレーが牛丼の良いところを打ち消す事なく存分に引き立てます。

 個人的に吉野家の魅力の本質は「粋」なカッコ良さにあると思っています。吉野家の牛丼そのものの味は昔も今もどの競合チェーンより粋だと感じますが、メニュー構成や商品展開に関しては、客層や利用動機の間口を広げて他社と競い合っていかなければならないという圧のなかで、かつてあったシンプルな粋が薄れている気がするのは正直なところです。しかしその中でこの新カレー、久々に吉野家らしい粋を感じました。とにかくカッコいい味です。

©文藝春秋

 その分もしかしたら、カレ牛ではなくカレー単品としては少し物足りなさを感じる人もいるかもしれません。ただしこれに関しては私の知人が面白いことを言ってました。このカレーは飲んだ後の締めにぴったりかもしれないね、と。

ADVERTISEMENT

 なるほどこれにはすこぶる納得です。最近吉野家ではから揚げやアジフライなどの揚げ物にまでメニューを広げている店舗も増えています。そういう店舗で牛皿やから揚げで一通り飲んだ後にこのカレーで締めるというのは、これまでとはまた違う吉野家の粋な楽しみ方なのかもしれませんね。

 欲を言えばこのカレー、「カレーライス主体に牛丼の具をトッピング」という現在のスタイルではなく、丼に入った普通の「牛丼の並」に、おちょこ2杯分くらいのこのカレーをかけて、あくまで「丼」の延長としてスプーンではなく箸でワシワシとかき込んで食べてみたいです。生卵や半熟卵同様トッピングメニューとして小鉢で少量出してくれたら、これから牛丼を頼むたびに毎回追加注文してしまうかもしれません。

トップを走る松屋を、吉野家が猛追…2020年に「牛丼カレー界」に起きた異変

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー