2019年には「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」で映画初主演を務めたかと思えば、2020年公開の映画「罪の声」では主演の小栗旬、星野源の脇を固めるバイプレーヤーとして登場するなど活躍を続けている松重豊さん。

 50代目前になって初主演となったドラマ「孤独のグルメ」が大ヒット。10月に発売した初の著書『空洞のなかみ』でも撮影の秘話が数々語られています。「食べるということだけをテーマにした」異色のドラマから見えてきた「空洞のなかみ」の正体とは――。

松重豊さん(毎日新聞出版 提供)

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――初著書『空洞のなかみ』のなかでも、『孤独のグルメ』の話題が多く出てきます。このドラマに関わって、どんな変化がありましたか。

松重 それこそ日常生活でも「やっぱり演じている手前、路地裏のひっそりしたお店に行くべきじゃないか」と思うようになりました(笑)。

『孤独のグルメ』は、いままで修行してきたことと全く違う、食べるということだけをテーマにした作品です。これまでの仕事とはまったく違う。それがここまで注目されて、日本のみならず、中国、韓国、台湾、東アジア全体でお客さんがいるというのが、本当のことをいうと、自分でもどういうことなのかまだよくわからないんです。

 でも、僕自身、これは面白く思わないと損だなと思っています。このコロナ禍で、また見ている人が増えているようです。飲食店に行けない時期に、再放送で何度も見ていると聞くと、改めてあのドラマがそれだけいろんな人に必要とされている、何かしらがあるんだろうとわかります。いまだからこそできることもあると思うんです。

「この1年の最後に、五郎が食べるものってなんだろう」

毎日新聞出版 提供

 2020年も『孤独のグルメ』年末スペシャルを12月31日に任されることになりました。僕自身、2020年に井之頭五郎が最後に食べるものってなんだろうとものすごく考えました。どういうシチュエーションで、何を食べるのが、もっともふさわしいのか。これならみんなと一緒に年を越せるという究極の答えを見つけて放送を迎えるつもりです。嵐の休止前最後の番組出演もあると思うんですけど、ぜひ立ち会っていただきたいですね。「嵐か五郎か」で、チャンネルをザッピングしていただけたらなと思います(笑)。

「予約の時も『孤独』でお世話になった松重ですけど…とは言いません(笑)」

松重豊著『空洞のなかみ

――これまでシーズン8まで放送してきた『孤独のグルメ』ですが、印象的な回やハイライトはありましたか。

松重 いろいろな回がありました。収録でニンニクを食べすぎた翌日の朝一番に、別のドラマの撮影で、臨終を迎える私をキャストが囲んで号泣するシーンがあり、号泣する美女に囲まれながら息を止めるのに必死になったこともあります。苦しくて僕も涙が出ました(笑)。

 でも、実際のところ、特にハプニングというハプニングはそんな起きないんです。振り返っても「おいしかった」ということぐらいしか思い出せないことも……。