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小池発言が「ターニングポイントになった」

 小池都知事は3月23日、「都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置を取らざるをえない状況が出てくる可能性がある」と述べ、国民の危機感が一気に高まった。

 一方、報道を通じて繰り返された小池都知事の発信は誤解を呼んだ。日本の新型インフルエンザ等対策特別措置法では予定されていない罰則措置を伴う欧州のような都市封鎖を想起させ、買い占めが起きたり、SNS上で「4月1日に東京でロックダウンが起きる」という根拠のない噂が広がったりした。

小池都知事 ©文藝春秋

 安倍前首相はヒアリングに対し「小池さんがロックダウンという言葉を使ったため、その誤解を解く必要があった。それを一回払拭しなければならない。あの法律の下では国民みんなが協力してくれないことには空振りに終わっちゃう。(略)そのあたりが難しかった」と述べた。また西村コロナ担当相も、「(発言が)ターニングポイントになった。結果としては緊急事態宣言が遅れた部分があったと思う」と証言している。

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「日本モデル」の基礎は危ういものだった

 こうして出された緊急事態宣言の下、商店や企業の営業自粛や、接触を避ける国民の行動変容によって、5月末には感染が一旦は収束に向かったのは事実だ。だが、ある官邸官僚は「泥縄だったけど、結果オーライだった」という言葉を残している。

 報告書作成を主導した独立系シンクタンク「一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ」理事長の船橋洋一氏は、こう総括する。

「場当たり的でも結果が出れば政治的には評価される。ただ、それでは将来に同様の危機が到来した時の再現性はない。つまり、『日本モデル』の基礎は危ういものだったと言わざるをえず、成功物語にさせてはいけない」

出典:文藝春秋12月号

 466ページにわたる報告書のポイントについて、船橋氏が解説したインタビュー手記「検証 2020年のコロナ対策」は、発売中の「文藝春秋」12月号および「文藝春秋 電子版」に掲載されている。

 そこには、冬のコロナ対応を監視していくためのエッセンスが詰まっている。