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漁の後は“漁師めし”でサイコーの朝ごはん! 『鹿渡島定置』乗船体験レポ

漁の後は“漁師めし”でサイコーの朝ごはん! 『鹿渡島定置』乗船体験レポ

能登半島・七尾市崎山地区でリアルな定置網体験

2020/12/11
note

 ハイテクな設備が入手できない発展途上国でも操業可能な漁業として注目されており、鹿渡島定置でも酒井氏を中心として海外での技術支援や指導を行なっているという。

 

 とはいえ当然、単にほったらかしていれば獲りたい魚がザクザク獲れるというような甘いものではない。

 安定した水揚げには魚の回遊ルートや潮を読む知恵に加えて、豊かな漁場が必要なのだ。このことからも、七尾湾がいかに恵まれた海かがわかるというものだ。

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 なお、漁は基本的に波の穏やかな湾内で行われる。ただ、運悪く風の強い日にあたるとやはりいくらか船は揺れるもの。船酔いが心配な方は酔い止め薬を服用して臨むと安心だろう。

こっちがメイン!? 獲れたて魚介の朝ごはん

 さあ、漁港へ戻ってきた時点で時刻は午前5時半。まだまだ空は暗い。 

 

 ……しかし、それにしてはやけにお腹が空いているような。

 見学しているだけであっても、船に乗っているのは体力を消費する。たくさんの魚を見て興奮した後ならなおさらのこと、腹が減る。

 

 それを見越してのプランなのだろうか? ここでいよいよ漁港に併設された水産加工施設へと案内され、お待ちかねの朝食が振る舞われる。なお調理時には魚の捌き方も教わることができる。

鵜浦漁港の水産加工所「魚工房旬」。食事を取れるスペースも併設されている
魚やその加工品を買うこともできる。これはさきほど獲れたアカエイの切り身

 この日の献立はアオリイカやフクラギの刺身、焼き魚に炊きたての白飯、生アカモク、そして大鍋で煮込まれた超具沢山の漁師汁……! しかも嬉しいことにどれも特盛り!

 普段は朝からこんなに食べられないが……、こちとら今朝は「漁の帰り」なんだからイケるイケる。最高だ。

 実際、このメニューは仕事をひと段落させた漁師さんたちに振る舞われる「朝飯(あさはん)」と同じものだという。

 もちろん、使われている魚はいずれも先ほど目の前で水揚げされたもの。感慨一入である。言うまでもなくいずれも味は抜群。

 一般的に魚の刺身は締めてからある程度の時間をおかないと味が出ないものだが、この獲れたてアオリイカの誇る旨みの前ではそんな理屈は無力。 

 

 小細工を弄す必要がないほど、美味い。むしろ、そのシコシコした歯応えが生きている。フクラギも青魚特有のにおいが出ておらず、白米がよく進む。

 そしてこの朝餉の主役はなんといってもカマス、カワハギ、ウスバハギが煮込まれた漁師汁だろう。

 

 彼らの肉と骨、そして無造作にかつ多量に放り込まれた肝から溢れ出すダシに舌がおかしくなってしまいそうだ。

 また、ここへアカモクを溶いて食べるのが崎山の漁師流だというので試してみる。なるほどこれはこれで磯の香りと独特のとろみが加わって荒々しくも趣深い味わいである。

 ああ、こんな朝食なら毎日でも食べたい。 

 

2時に起床する三文の徳

 ちなみに、この朝食をいただける「選別・魚の捌き方・朝食コース」のお値段はなんとお1人様あたり2000円。この金額でこの食事は…….かなりお得だろう。

 せっかく乗船体験に参加するなら、みすみすこれを食べ逃す手はない。セットで楽しむべきだ(乗船体験~朝食コースは5000円)。

 

 ……いや、正直なところ、観光のスケジュールが詰まっている人たちは乗船を断念してこちらの朝食を楽しむだけというのも大いにアリだろう。朝からこんなに美味しい食事がとれれば、その日の観光にも弾みがつくというものだ。

 ……堪能した。

 完食して腹をさすりながら時計を見ると。なんとまだ午前8時。

 おお、この時間からこんなに満ちたりていていいのだろうか。早起きは三文の徳だというが、たしかにこれは夜中の2時に起床した甲斐があったというものだ。 

 

 有名店を食べ歩くグルメツアーももちろんアリだが、こういう「獲る」「締める」の段階から実地で体験し、「知って食べる」旅もいいものだろう。

 というわけで能登への旅を考えている読者諸君、千枚田や輪島塗といった定番コースに「定置網&海の幸」という選択肢を加えてみてはどうだろうか。

取材協力=崎山半島渚泊推進協議会
写真=深野未季/文藝春秋、平坂寛

INFORMATION

定置網乗船体験:(株)鹿渡島定置
乗船体験コース(2時間)3000円、選別・魚の捌き方・朝食コース(2時間)2000円、乗船体験~朝食コース(5時間)5000円
電話:0767-58-1350、090-2035-4627(酒井)
〒926-0001 石川県七尾市鵜浦町9-38-2
メールアドレス:kadoshimateichi@nanaonet.jp

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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