ゲーセンは東洋人の自分が唯一ヒーローになれる場所
「ニューヨーク時代は勉強するか、ゲームセンターに行くか、しかやってなかったですね。ストリートファイターⅡ全盛期で42ndって一番やばい地域にニューヨークの強いやつが集まってくる24時間営業のゲーセンがあって、そこに朝から晩までいましたね。当時は今みたいにチャンピオンシップがあったわけじゃないし、プロゲーマーなんかいない時です。そこで僕はチャンピオンだったんですよ。東洋人の自分が唯一ヒーローになれる場所だったんです、そこが。『フェイロン』っていう格闘ゲームでブルース・リーのキャラクターがいて、ゲームの設定上は弱かったんですけど、それで勝つと周りの黒人が喜んでくれるから、それが嬉しくて。黒人はブルース・リー大好きですから。当時弟子が5、6人いましたからね。終わった後、チキンウィングで反省会。『あそこでお前、昇竜拳うっておかないとダメだろ!』とか言って(笑)。そういう時は英語がベラベラ出てくるんですよ、自信があるから。でも学校行くと、どもっちゃうんですよね(笑)。
そうそう、ある日、すごい美人のスーパーモデルみたいな女性を連れたギャングが来たんです。負けたら交代しなきゃいけないんですけど、そいつが交代しないんですよ。それで彼が『教えてくれ』って言うからずっと教えてたんです、1時間ぐらい。そしたら最終的には『ヘイ、ニガ』なんて言われて。普通黒人は黒人以外に“ニガ”なんて言わないんですけど(笑)。帰ったあとに仲間達から『お前すげーじゃないか!』って言われて。『何なの?』って言ったら、『あいつヒットチャートナンバーワンのラッパーだぞ』って」
当時の東海岸でギャングの親分でラッパーといえば、すぐに思いつくのがあの人物だ。
そう、ノトーリアスBIG。もしこれが真実だとしたら「BIGGIEにストⅡを教えた男」ということになる訳で、「やりすぎ都市伝説」にも出場可能なくらいのレジェンドだ。もし彼が凶弾に倒れなかったら、ここ「湯らっくす」に、西生とシェイクハンドする写真が飾られていたに違いない。何から何までMADMAX。スケールが違う。