再び同じマンションへ行くと、張り紙に変化が……
1週間後。
先週のことなどすっかり忘れていたAさんは、再び同じエリアのポスティングでそのマンションに足を踏み入れてしまった。
「(あ、ここあの時のか…)」
玄関ホールに入るときに、当時の不気味さが鮮明に思い出されたAさん。そんな彼の目に入ってきたのは、またあの張り紙。
だが、張り紙には変化があった。
「絶対にチラシを入れないでください。困ります。」
「絶対に」の部分に、えらくキレイな手書きの赤丸が追記されていたのだ。
それを見た瞬間、Aさんには自分の行為が“マンション全体に認知されている”、もっと言うならば“全住人に見られている”ような不気味な実感が湧いてきたという。監視カメラがあるような場所ではなかったが、これ以上はやめたほうがいいという直感を覚え、その日は別の場所に移動した。
昔から不気味な噂のあるマンションだった
それから2日後。
Aさんは大学の仲間内で家飲みをしていた際、先の出来事を何の気なしに語ったそうだ。みな一様に不気味がるなかで、卒業が決まっていた先輩のYさんが少し深刻そうな表情でこう切り出した。
「それさぁ、もしかして●●マンション?」
「え、なんで知ってんですか!?」
Y先輩はかつて同じ地域のマンションにまつわる不気味な噂を聞いたことがあるそうで、当時彼の世代は一時期その噂で持ちきりになったのだという。そのため、もしや同じ場所では……と話を聞きながら疑っていたのだ、と。
彼いわく、そのマンションはかつてどこかの会社の社宅だったそうだが、いつの間にかなし崩し的に普通のマンションとして使われるようになったのだという。
「俺が聞いた話だとさ、あそこに住んでいる人さぁ、“みんなどっかケガしてんだよ”」