北九州に住む書店員でありながら、膨大なホラー知識と実話怪談のアーカイブを持つかぁなっき氏。彼は“猟奇ユニットFEAR飯”の語り手担当として、2016年の夏からライブ配信サービスTwitCastingで、「禍話」という実話怪談チャンネルを続けてきた。
今回はその膨大なアーカイブのなかから、視聴者たちを恐怖に包んだ「集合体マンション」をお届けする。チラシ配りをしていた体験者が「もう二度と近づきたくない」と語った“とあるマンション”から始まった恐怖体験とは。(全2回の2回目/#1より続く)
(文=TND幽介〈A4studio〉)
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ケガを負い、治し、またケガを負う――笑顔で続ける住人たち
病院で働くTさんの知り合いの証言では、ケガを負い、治し、またケガを負う、そんな不可思議な行動を笑顔でずっと取り続ける一団が、確かにあのマンションにいるそうなのだ。
近隣住民とのトラブルもない。
電気・水道などの公共料金はみなきっちり払う。
表面上はなんてことないただの社宅。
だが、時折あのマンションにチラシを入れてしまったフリーターや、立ち止まって住民に話しかけられてしまったホームレスが、あの地域で姿を消しているという声も少なくなく、おまけに警察はなぜか「事件性はない」として動いてくれないという噂まである。
「だから、マジで、あそこはヤバいんだって……だから…クソ……」
そう言ってT先輩は脂汗をかきながら俯いてしまったそうだ。
「どうしよう…どうしよう……」
夏休み、Kさんは実家へ
哀れにも泣きじゃくるKさんを見て、Aさんは「で、でも幸い夏休みすぐだしさ、一旦実家帰んなよ! そんで何週間か経てば忘れてくれるかも知んないしさ!」
と無理やり励まそうとした。
すると、T先輩もその言葉に思うところがあったのか、
「そうだよ! 一旦実家帰れ、な! で、戻ったらさ、すぐ引っ越しな、俺も手伝ってやるから!」
とKさんを励ましてくれたそうだ。
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長い夏休み。
毎日照りつける日差し。
息苦しい湿気。
Aさんは、かすかな恐怖心があり、Kさんと一度も連絡を取らなかったという。
どこかで“彼ら”に聞かれていたらと思うと、無性に嫌だった。
夏休みが明けると、Kさんは大学から姿を消していた。