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取り込まれたK、マンションの住人が目指していたもの

 一同は、日差しの当たるカフェに駆け込んだ。

 起こった出来事を頭のなかで反芻しているのか、みな口数は少なかった。

 すると、メンバーの女性のスマホが鳴った。相手は、同行はできなかったが事の顛末を知りたがっていた別の友人だった。

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「と、とりあえずスピーカーフォンにするね」

 詳細を聞きたがる彼女のテンションに、正直みなまだ追いつけないくらい憔悴していたのだが、Aさんを中心に起こった出来事を話すと、電話越しの彼女から返ってきたのは、困惑ではなく、奇妙な“納得”だった。

「あー……なんかね、私さ民俗学、まあ、宗教もだけど、専攻してるじゃん。そこで、なんかこう、それと似たようなことあるんだよね……。こう、“体の一部を失うことで神的存在に近づこうとする”みたいな。そういうのかなぁーなんて。……あれ、みんな聞こえてる?  おーい」

 それからKさんは戻ってこなかった。

 無人になった彼のアパートも引き払われた。

 彼の両親が、警察に捜索願いを出したのか、それは彼らにはわからない。ただ、T先輩が言っていた噂を考えるに、出したとしても「事件性はない」という処理がなされるのかもしれない。

 どちらにせよ、これ以降誰もKさんの話や一連の出来事を語ることはなかったそうで、Aさんとその仲間は大学を卒業後、みな一様に地元を離れ、誰もこの地で就職するものはいなかったそうだ。

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マンションを突き止めたリスナーの身に起こったこと

 かぁなっき氏に寄せられた最初のダイレクトメッセージに書かれていたのはここまでだった。

 しかし、この話を聞いたリスナーの一人が、そのマンションをどうしても突き止めようと、かぁなっき氏にしつこく問い合わせてきたことがあったそうだ。

 何度か「いやぁ、やめたほうがいいと思いますよ……」と助言していたのだそうだが、彼の熱気は収まらなかった。

 しばらくして、彼からまたダイレクトメッセージが来た。

 そこには、マンションを突き止めたこと。そしてそこへ突入した数日後の夜中に、自宅のアパートの外廊下に体の一部を失った老人と中年男性の二人組が現れ、自分の居場所をドアの向こうで探し回られたこと。

 そして、「本当に、すみませんでした」という氏への謝罪とともに、

「禍話で語られている場所を探そうとしている人が自分の他にもいるなら、どうかやめるように言ってください」

 という一文が添えられていたという。