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藤井聡太四段にプロ公式戦で挑んだ学生名人は「オーラが強烈でした。気圧されました」

藤井聡太四段にプロ公式戦で挑んだ学生名人は「オーラが強烈でした。気圧されました」

東大将棋部物語 #2

2020/12/22
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 1人で東京に帰ってきた藤岡さん。取材攻めに時間を見つけての対局準備、いいところがなかった対局を終えて疲労困憊だった。2週間後、左耳が聞こえなくなって病院に行った。

「突発性難聴でした。治療して治りましたけれど、疲れやストレスが自分が思っていた以上だったのだなと思いました」

藤井四段戦について藤岡さんが部誌「銀杏の駒音」に寄せた文章

人生の糧となる貴重な経験に

 1年後、藤岡さんは若手棋戦のYAMADAチャレンジ杯に出場し、長谷部浩平四段と対局した。藤井四段戦と違って生放送も取材もない。

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「負けはしましたが、朝日杯よりずっとましな将棋を指せました。1年で序盤の勉強をした成果が出て、中盤まで離されずについていくことができました」

 対局から3年、藤井四段はタイトルを2つ獲得し藤井二冠になった。

「もうトップに昇り詰め、すごい人と戦ったんだなと改めて思います。あのオーラの凄さはなかなか体験できるものではなく、何かを究める人になるにはあんなオーラが必要なんだと感じました。これからの人生の糧となる貴重な経験をさせてもらいました」

 

「東大合格はゴールじゃない」

 今、藤岡さんは大学院を終えた後の将来設計を考えている。

「東大に合格したときは、奨励会を退会した挫折感が吹っ切れたと思いました。でも、東大合格はゴールじゃない。自分は将棋のプロになれなかったけれど、代わりに何ができるか考えないといけません。今は、農林系のキャリア官僚になれたらと思っています」

「いつか藤井二冠に感じたような一流の人がまとうオーラを自分もまとえたらいいなと思いますか」と質問すると、「そうだといいですね」と微笑んだ。

 写真=末永裕樹/文藝春秋

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