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息子たちに、少しはお金を残してやりたいと思う

 ちょうど息切れしてきてた時やったんです。お金の隠し場所に困り果ててたでしょ。1億で10キロですよ。重たい。古本より始末に悪いって思いましたよ。車で走ってても、後ろの車が警察の車に見えて、サクロンを毎日10袋飲んでも、胃が痛くてしようがなくなってた。50日勾留されて、保釈金積んで出て……。もういいかって。

――でも、10年経って今また店をやりださはった。

 生きていくため、やね。家もなくなって、すっからかんになってしもたから。息子、1回グレたことあったの。その息子に、私の生きざまを伝えたいと思ってブログを書いたて言うたでしょ。息子たちに、少しは(お金を)残してやりたいと思う。井上さんも子どもいはるんやったら分かるでしょ?

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――私も家持ってませんけど、まだ自分のことで精いっぱいで、そこまで考えたことないですけど。

 それはね、井上さんが育ちがいいからですよ。私には一目で分かる。

女性が座っているあがり框 撮影/黒住周作

 

1000万円手に持ってこの仕事を辞めたら、傷にならないの

――お金って、そんなにも必要なのかなあ。

 あのね。お金って、ものすごい力を持ってます。女の子、ちょっとだけこの仕事をやってやめたら、心に深い傷が残ります。けど、1000万円手に持って辞めたら、傷にならないの。

 お金があったら、たいがいの問題は解決します。夫婦喧嘩しませんわ。やさしい気持ちになれる。お金ない時、人に親切にしなさい言うてもできへん。生理ナプキン買えないでいて、人のことを思う余裕ないでしょう? そういうことなんですよ。

 返事に詰まっていた私に、まゆ美ママはこうも言った。

「そりゃあ、風俗という選択をしないで人生を送るほうが、女性としては幸せなんだと思いますよ。でも、何かの事情でやむを得ず風俗の世界に飛び込んだのやったら、(風俗の仕事を)ポジティブにとらえて、頑張って1円でもたくさん儲けるほうがいいに決まってますやんか」