一番うれしかったのは内田有紀さんにお会いできたこと(笑)
――それはまたすごいですね。
藤森 駒箱から駒を取り出して玉を置く。棋士なら当たり前のことですが、将棋を知らない方にはそれが簡単にできない。まず40枚の駒から玉を見つけるのも大変なんです。玉と同じく裏に何も書いていない金と間違えてしまうんですね。
――なるほど。
藤森 あらかじめ金4枚を抜いておくという工夫をして、「裏が白ければ王様で、それで大丈夫です」と伝えました。あとは駒箱から盤に散らばせた時に、玉が上の方に来るようにするということもやっていましたね。正直、僕がずっといる必要があるのかとも思いましたが、内田さんから「いてくださってうれしいです」と言われてテンションが上がりました。今回、一番うれしかったのは内田有紀さんにお会いできたことです(笑)。
独自の「藤森節」が話題に
――藤森さんはAbemaTVの将棋番組などで解説を行うとき、「マヌーサ」などのドラゴンクエストの呪文などをたとえに交える、独自の「藤森節」が話題になっています。「観る将アワード2019」では、「ベスト解説者」にも輝いています。解説において心掛けていることはありますか。
藤森 解説だけでなく、将棋の本を書く時もですが、棋譜の符号を入れすぎると難しくなるので、それを少なくし、かつ盤上の進行がわかるようにということですね。
――一つの例として、ドラクエは視聴者にとってわかりやすい一般常識と言えるのでしょうか。
藤森 そうなんですよね、ドラクエに限らずそれが難しくて、どうなのかなあ……。自分はドラゴンクエストの中では6を特にやり込んで、その時は将棋をまったくやっていませんでした(笑)。
――ちなみに、同世代の棋士でドラクエをプレイした棋士はどのくらいいますか。
藤森 2~3割でしょう、半分はいないと思います。「マヌーサ」「ホイミ」などは、かつて将棋会館の控室で10秒将棋が盛んにおこなわれていた頃に鈴木さんあたりが言っていたことで、それを借用したものです。あとは通っていた蒲田の道場で聞いたおやじギャグなども。事前に準備したワードではなく自然に出てきたもので、あれでよろこんでいただけるならラッキー、くらいの感覚です。