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将棋一家に育ったYouTuber棋士は「近所のお兄さんが教えてくれる」感覚で

将棋一家に育ったYouTuber棋士は「近所のお兄さんが教えてくれる」感覚で

藤森哲也五段インタビュー

2021/01/18
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動画は「近所のお兄さんが教えてくれる」感覚で

――将棋のYouTubeは?

藤森 もちろん全部見ています。最近は都成さん(竜馬六段)が始めましたよね。僕のところは将棋をガッツリやっていますけど、みなそれぞれの色があります。あと、やっぱり森内チャンネルはすごいですよね。森内さん(俊之九段)が10段階評価の10で、環那さん(鈴木女流三段)も8はあるでしょう。僕のところなんか自分が5で、ぬいぐるみは1ですよ。

――いやいや、もそっと上だと思いますが。

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藤森 コスパはいいですよね(笑)。最近はYouTuber棋士と仕事先などで一緒になると「番組はどう?」という話も出てきます。ファンに伝えるという観点では書籍の執筆もありますが、文字で読むのと話を聞くのではニュアンスが異なります。僕の動画は「近所のお兄さんが教えてくれる」くらいの感覚でいきたいと思っています。

 将棋には「家の中でできる、集中して頭を使う、一度覚えたらずっとできる」というメリットがありますので、これからは将棋に興味を持つ人がより増えると思っています。今は興味を持ったらまずサイト検索をするでしょうから、そこで自分のところに来てくれた方を、固定ファンにできればと考えます。あと、リアルでの将棋教室もやっていますが、通っている子どもたちが僕の番組を見ているんですね。以前は大盤を使って基本的な定跡を教えていましたが、今はみんな動画で予習を済ませてしまいます。教室では実戦のみとなりましたが、お互いに効率がよくなりました。

 

ワンシーンの撮影に8時間

――話は変わりますが、先日放映されたテレビドラマ『うつ病九段』で監修を担当されました。その時に心掛けたことは?

藤森 役者の方に手つきやしぐさ、作法を教えるのが仕事ですが、当然ながらあちらは演技のプロなので、細かい演技ではなく、必要な情報を伝えることを心掛けました。以前に映画『3月のライオン』でも将棋の監修を務めましたが、その時は時間があって、主演の神木(隆之介)さんとは20回以上も直接会う機会があり、情報を伝えられたと思います。ですが今回の安田(顕)さんとは2回くらいしかお会いする機会がなかったので、可能な限りコンパクトに伝えられるようにしたつもりです。

――収録現場で特に印象に残ったことはありますか。

藤森 先崎(学九段)さんの奥様役を演じたのが内田有紀さんですが、内田さんが駒箱を開け、玉を取り出して5九へ置き、ため息をつくというシーンがありました。それだけのシーンを撮影するのに8時間もかかったことですね。