楽しく強くなれるように
――番組制作にはどのくらいの時間を要するのですか。
藤森 通常の将棋動画は1本30分の尺で撮り、それを30分ぐらいで編集します。編集は専門の人に任せていますが、最初は3~4時間かかっていました。何本か編集しているうちに慣れたので今くらいのスピードになりました。
――そもそも、なぜ「将棋放浪記」の配信を始められたのですか。
藤森 コロナの影響もありますが、「動画配信によって将棋の技術をより面白く伝えられるのでは」という考えは以前からありました。例えば、棋士が技術を伝える手段として指導対局があります。1対1で丁寧に教えられるのが指導対局の良さですが、動画配信ならばもっと多くの人に効率よく伝えられるのではと考えました。
――どのような番組を目指していますか。
藤森 単純に言うと、見ただけで将棋が強くなれる番組ですね。「楽して強くなりたい」と考えるファンの方は少なくないと思います。将棋が強くなるには時間がかかりますが、それでもなるべく、楽しく強くなれるような番組を目指しています。
――棋力でいうと、どのような層の方が見ているのでしょうか。
藤森 将棋を始めたばかりの方から初段になるあたりの方までの層かなと考えています。配信を始めた当初は「従来の将棋ファンが見てくれるのでは」と思っていましたが、最近将棋を始めたという視聴者が多くなりました。ネットで「将棋」を検索して、僕の動画にたどり着いたという方も多いようです。ファンの方からするとプロ棋士に教わることの敷居は低くないと思いますが、僕の動画を見て「プロ棋士は楽しそうだ、優しそうだ」と思って、指導対局などに興味を持ってくれるといいなと思います。
「鬼殺し戦法」が1番のヒット
――動画配信のやりがいはどのようなものでしょうか。
藤森 数字が全部出ることですね。何人が動画を見たか、コメントをいくつもらったか、など。
――これまでに一番ヒットした番組は何ですか。
藤森 鬼殺し戦法を指した番組です。視聴者が16万を数えました。通常だと3~4万なので、かなりのヒットです。その時の将棋の内容は、こちらの鬼殺しをきっちり受け止められたのに、力でねじ伏せて勝ったというものでした。プロの凄さをわかってもらえたのかという気持ちはあります。自分はプロ棋士の中で下級クラスにいますが「これほど強い人が下のほうなのか、じゃあプロの世界って何なの」という気持ちで見てもらえたらと思いますね。
――他のYouTube動画は見ますか。
藤森 いっぱい見ていますよ。自分の番組をどう伸ばすのかということで研究してます。完全にYouTube脳になってますね(笑)。将棋以外だと、格闘家、料理家、本の要約チャンネルなどを見ています。中にはビールを飲んでいるだけという動画もありますが、それが何で面白いんだろうと考えますね。