繋がらない家族への電話
宿泊していたホテルのフロントに確認すると「停電していて、ガス、水道も止まってます!」と従業員さんも混乱していた。
駐車場に向かい、車のガソリンを確認したところ、残り半分。携帯電話は車内でも充電できる。次は消防署へ電話をして、近くの避難所を確認した。
「××小学校が一番近い避難所になります!」
土地勘のない青森では、小学校の場所なんてわかるはずもない。停電していてテレビのニュースも見ることができない。
何がどうなってるんだ……。
冷静になれるはずもないが、そう努めようとした。ホテルの部屋に戻り、そこでやっと家族の安否が気になって電話をかけた。
「ツツツ。ツツツ……プー、プー、プー」
電話が繋がらない——。
その時、側にいた人がワンセグでニュースを見ていた。その画面から飛び込んできた映像は、今も忘れることができない。
「壊滅……壊滅……壊滅……」キャスターの声が頭に響いた
東北地方の沿岸部だった。車のすぐ後ろまで来ている津波の波しぶき。カメラが捉えたその映像は、車が飲みこまれる寸前に別の映像に切り替えられた。
「壊滅……壊滅……壊滅……」
呆然とした自分の頭の中に、ニュースキャスターの声がひたすら響いていた。
心臓が冷たくなっていた。自分の地元の福島県南相馬も沿岸部にある。地元の仲間の安否が気になるも、電話回線がパンクしているのか、やはり誰にかけても電話は繋がらない。ひたすら電話をかけ続け、ようやくツレの道みち治はると連絡が取れたのはそれから1時間後のことだった。
「おい、大丈夫か!?」
「ああ。とりあえず俺は今、山側の会社の駐車場まで逃げて来てる」
「そうか。よかった……」
「いや、それが……嫁と子供たちの住んでた原釜の家は、津波に飲まれてった」
「え……?」
「しかも誠や弟は連絡取れねえ状態で……終わったよ。終わった……」
「……」
自分は電話を持ったまま、その場に立ちつくしていた。
地元の仲間の家が津波に飲まれ、家族の安否がわからない―― 。