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困難な操作がホラー演出につながった

 しかし、これがホラーと非常に相性がよかった。カメラが固定されているため視界が悪く、ゾンビの声がしても居場所がわからない。操作も容易ではないので、クリーチャーに追われるとパニックになってしまう。そんな状況で洋館から脱出するために謎を解かねばならないわけで、操作の難しさがむしろ恐怖を引き立てたわけだ。

 このほかにも、ゲームのロード時間をドアの開閉画面でごまかしつつ恐怖心をくすぐるなど、ゲームの問題点をうまくホラーで隠すことができていた。また、「ゲームとゾンビの相性の良さ」を日本で知らしめたのも本作であろう。さすがにゾンビをはじめて出したゲームではないものの、元・人間であるゾンビをプレイヤー自身が倒してしまえる恐怖と興奮は、特別なものだと教えてくれた。

『バイオハザード ディレクターズカット』(1997年) 画像はPlayStation. Blogより

 とはいえ、いまになって初代『バイオハザード』を見るとちょっとおもしろい部分もある。たとえばムービーでは実写パートも採用されているのだが、あまり予算が潤沢でなさそうだと感じられる内容だった(しかも、映像の一部は多摩川の周囲で撮影されているという)。また、EDテーマは渕上史貴の「夢で終わらせない」といういかにもJ-POPらしい楽曲が採用されており、『バイオハザード』シリーズが最初からものすごい大作だったわけではないと理解できるのだ。

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 それでも、『バイオハザード』はまだ馴染みの薄い3Dグラフィックでホラーをうまく作り上げており、当時のプレイヤーたちにとって驚くべき体験をもたらしたのである。発売直後の販売本数は20~30万本だったが、1年後には100万本を達成。最終的には全世界で275万本のヒットを記録した。

ホラーから「狙って撃つゲーム」になった『バイオハザード4』

 ホラーで人気になった『バイオハザード』だが、続編になると少しずつ雰囲気が変化していく。ジョージ・A・ロメロがTVCMを監督して話題になった『バイオハザード2』は、むしろホラー映画よりアクション映画のような雰囲気が強くなる。たとえば、道中でボスが何度も出てきたり、最後には主人公が「アンブレラ(ウイルスを撒き散らす悪い企業)をぶっ潰してやる!」と戦う意志を見せるのだ。

 この傾向はその後の作品でもよく見られ、『バイオハザード3 LAST ESCAPE』では「緊急回避」というタイミングよく操作することで敵の攻撃を避けられるアクションが追加された。あるいは『バイオハザード CODE:Veronica』では、クリーチャーの心臓をスナイパーライフルで撃ち抜くなんてシチュエーションが出てくるようになったのである。