4月27日に開幕する女流王位戦五番勝負。ここに初めてタイトル挑戦者となった山根ことみ女流二段が登場する。近年、里見香奈女流四冠と西山朋佳女流三冠の「二強」に実績のある女流棋士が挑むという構図が多く、「初挑戦」は2018年度女流王位戦の渡部愛女流三段以来となる。
山根女流二段は愛媛県松山市で育った23歳。2020年度には17連勝を記録し、優秀女流棋士賞も受賞した。女流トップクラスと評価されている終盤力は、子ども時代に身に付けたものだ。インタビュー前半では、毎日通ったという松山将棋センターでの日々とアマ大会での活躍について聞いてみた。(全2回の1回目)
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東京に出て強い女の子と指すのは負けても感動的でした
――山根先生は、小中学生のメジャー大会で個人戦でも団体戦でも華々しい活躍をされています。初めて全国区の活躍をしたのは、小5でLPSAの小学生女子名人戦で四国代表になったときではないかと思います。この時は将棋を始めて1年未満でしたか。
山根 小5の4月に四国大会があったなら1年経ってないですね。女の子の大会があるということで、隣の香川県まで連れて行ってもらいました。「将棋は楽しいな」と思いながら指して何回か勝ったら優勝で、「四国代表として東京に行ってください」と言われ、びっくり。初めて大きなトロフィーをもらって嬉しかったのを覚えています。
――優勝して驚いていらっしゃるお母さまのコメントをLPSAのサイトで見た記憶があります。ご本人もびっくりの優勝だったのですね。
山根 詰将棋はたくさん解いていたけれど、戦法の勉強をしたことがありませんでした。夏休みの全国大会ではネットで棋譜が中継されます。それで、松山将棋センターの児島有一郎先生が、戦法を全然知らないと恥ずかしいから、全国大会までに覚えようと言って、特訓してくれることになりました。
「居飛車か振り飛車かどっちがいい?」と言われて、私は振り飛車を選び、中でも初心者に優しい四間飛車を教わることに。ノーマル四間飛車だと、まず角道を止めて、美濃に囲う。先生としても教えやすかったと思います。それからプロになって一昨年くらいまで、ずっと四間飛車一本でやってきました。最初に私が居飛車を選択していたら、居飛車党になっていたと思います。
――小学生女子名人戦では小5、小6と2年連続全国大会に行っています。各地区代表4人が集まっての大会で、トップレベルの女の子が集まっていました。刺激になりましたか。
山根 小6のとき中七海ちゃん(現奨励会三段)とあたりました。1つ学年が下でしたが、すごく強くて……。ボロ負けした記憶があります。上には上がいると思いました。松山将棋センターには、私の他に女の子は2人だけ。東京に出て強い女の子と指すのは負けても感動的でした。