2019年の4月時点で、全国に刑務所は61カ所、少年刑務所は6カ所、その中で生活する男性受刑者は4万156人、女性受刑者は3564人だという。
窃盗、薬物事犯の高い再犯率や外国人受刑者の処遇など数多くの問題を抱える現代の刑務所だが、社会全体の問題と並行するように、受刑者の高齢化も大きな問題になっており、60歳以上の受刑者は実に20%を超えているという。
そんなまさに「社会の縮図」である刑務所の現状について『塀の中の事情』(清田浩司)より、一部を抜粋して引用する。今回も全国でも珍しい高齢者対応の広島・尾道刑務支所について。受刑者同士の「老老介護」状態にもなっているこの場所で何が起こっているのか――。(全2回の2回め/#1を読む)
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無銭飲食の常習者
こうした高齢受刑者の数はこの刑務所でも年々増えているのが現状だ。10年前は44人だったのが、取材当時(2015年)74人と実に1・7倍にも増えている。
なぜ、高齢者が刑務所へ入ることになってしまったのか。70代で服役20回という受刑者に話を聞いた。
──今回、服役することになった罪名は何でしょうか?
「詐欺です。何人かで飲んでいて、支払いになって詐欺だと……」
詐欺と聞いてピンときた。
──無銭飲食ということですか?
「そうそう」
最初に服役したのは22歳の時。無銭飲食の常習者で、前回出所してからわずか2か月で刑務所に舞い戻ってきてしまったというのだ。被害金額は5~6000円だという。
──出所する時に二度と塀の中に来ないぞという思いはなかったですか?
「それはあるんですけど、1か月探しても仕事がなく(出所時に所持していた)5000円やそこらのお金じゃ生活もできないしね」
計20年近く塀の中で過ごしたという彼は長年、解体業の仕事をしていたというが、天涯孤独な上、高齢で足が不自由なことから生活ができるだけの仕事が見つからなかったという。50歳を過ぎたあたりから就職の“厚い壁”を感じるようになったと話す。
──無銭飲食を繰り返すのは、お金が全然なくなってしまって、食べるものに困ってやってしまうんですか?
「結論はそうなりますね。だから恥ずかしい話、無銭飲食をする前に水ばっかり飲んで生活するんですよ。朝起きたら水を飲んでね、お腹が空いてきたらまた水を飲んでという生活をやってそれから無銭飲食をすることになるんです、みっともないけど……」
──刑務所に入ってしまうことがわかっていて無銭飲食をしているのですか?
「そう言われてもやむを得ないですね」
──70歳を超えられて服役生活もなかなか厳しいんじゃないですか?
「ちょっとね、口じゃ負けない気でいるんだけど体でついていくのが大変だね」
──何が一番大変ですか?
「やっぱり動作が鈍いってことだよね。悔しくてさ……」
老いていき、動作もままならない自分への歯がゆさ、悔しさを滲ませていた。出所後はこれまで経験のある土木関係の仕事を探すというが、それが見つかる保証はない。