1位 寛屋(和歌山)
ハンバーグ店は、チェーン店よりも圧倒的に個人店が多い世界で、チェーン店を探す方が難しい。さらに今回の特集はローカルなチェーン店縛りということで、私が実際に訪問して食べたお店の中から選択させていただいた。
そんな中から1位として選んだのは、和歌山のハンバーグレストラン「寛屋」。1989年に宮崎のハンバーグレストラン「平家の郷」のフランチャイジーとして創業した後、1999年に独立して新たに「寛屋」としてオープン。現在は和歌山と大阪で3店舗で運営されている少数精鋭のチェーン店だ。
寛屋の看板ハンバーグが、この「俵ハンバーグ」。黒毛和牛100%でつなぎ無しのハンバーグだ。オーダーするとコロンとした俵のような形のまま運ばれ、“儀式”が執り行われる。
真っ二つにカットされた俵ハンバーグのそれぞれをプレートに押しつけることで、中まで一気に熱を通す。
寛屋オリジナルの特製タレがかけられると、音を立てながら煙が立ち上がる。手に持った紙ナプキンに容赦なく飛び散る油。美味しいハンバーグを食べるための大事な儀式だ。そして、ナイスなルックスのハンバーグが姿を現す。
箸で食べるのが寛屋のスタイル。一口食べるだけで、その柔らかさに驚く。そして、黒毛和牛らしい肉の味と脂肪の甘みが、口の中で溶け合う。やや甘口の特製タレは、肉の味をいっそう引き立ててくれる。
一口噛むだけで、ヒトが味を感じる舌の受容体から、味を処理する脳の大脳皮質あてに、もの凄い情報量が高速で大量に送信される。それはギガか、もしくはテラか。まさに美味さの5G通信。圧倒的な旨味に対して、脳の処理速度が追いつかない。アクセントが欲しくなったら、小皿のポン酢や柚子胡椒を少しだけつけると、また新たな刺激が脳に伝わる。
時を忘れて食べることに没頭していると、気付いたら完食してしまっていた。寛屋の俵ハンバーグは、そんなハンバーグだ。
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