小田急ロマンスカーミュージアムを報道公開で見学して、さすが小田急はいいものを作ったなあ、と嬉しくなった。

 実は小田急側にも事情があって、保存車両の置き場に困っていた。2018年に代々木上原~登戸間複々線化が完成し、輸送力増強の準備が整った。線路の準備が整ったら、次は車両を増やしたい。しかし、車庫の容量には限度がある。展示施設を作って保存車を移動させたら、可動車両を増やせるというわけだ。(全2回の2回目。前編から読む)

小田急電鉄のレジェンド、生方良雄氏の手によって誕生した3000形ロマンスカー

コアなファン視点だと、ちょっと物足りない

 ミュージアム内をひととおり巡り、まだ試食できないミュージアムクラブハウスを恨めしく思いつつ帰路についたわけだけど、何かもの足りない気分もあった。ロマンスカーミュージアムは、ロマンスカーファンやファミリーには満足だろうけれども、小田急ファン、鉄道好きにはちょっと寂しい。足りない要素は、小田急の歴史と技術に関する展示だ。

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 2017年9月から11月まで、横浜駅近くの「原鉄道模型博物館」で企画展「小田急 ロマンスカー物語」が開催された。小田急線開業90周年とSE車就役60周年を記念したイベントで、運行開始間近の「70000形運転室モックアップ」の展示が話題だった。ほかにも「7000形用の部品」、「連接台車に車体を載せる心皿」、「通勤車両9000形用のヘッドライト」など、工場の蔵出し部品多数を展示した。とくにSE車の車両図面は必見で、連接車体の構造や、新宿寄りの先頭車と小田原寄りの先頭車で寸法に差異があるなど興味深かった。これらはロマンスカーミュージアムに展示してほしかった。

 ないものは飾れないけれど、あるものを展示しないとはどういうことだろう。しかも原鉄道模型博物館は他社の企画展、こちらロマンスカーミュージアムは本家本元だ。

 そしてもうひとつの気がかりは、前述の3000形、3100形の誕生に関わった生方良雄氏の名前がみつからない。生方氏は戦後、大東急から分離独立した「新生小田急」でロマンスカー時代を築いた人である。鉄道趣味人でもあり著書も多数。小田急ファンにとっては神様のような存在だ。私はてっきり、ロマンスカーミュージアムの館長は生方氏が就任すると思っていた。もっともご高齢だから、せめて名誉館長として名を連ねると思っていた。